第21話








陸奥市内を駆け抜けたバイクはとあるサビれた倉庫の中に入っていった。



バイクが停まると宗介はすぐさま、距離を取り矢筒に手をかける。


『慌てないで、私は敵ではないわ』フルフェイスのメルメットを脱ぐと長い黒髪をなびかせた、端正な顔立ちの女性の姿が現れた。



【何者なんだ・・・】



【まだ公に出来ないが君の力が必要だ】


倉庫の奥の暗闇から黒ずくめの男が現れた。



宗介はその姿を見て驚きを隠しきれなかった。


【ク・・クロウ・・?】


T都の九十九に現れたニューヒーローは東北の宗介の住む陸奥の地でも大きく取り上げられていた。


【今、世界は未知なる脅威の危機にある そこでオレたちはチームを作ることになった】


【チームって・・・どういう事だ】宗介はまだ矢を構えたままの状態で問いかける。


【正義と向き合え、楠木宗介】


【なぜ・・知っている?!】宗介はクロウに矢を放った。


クロウは腰に装備していたこん棒で宗介の矢を叩き落とした。



そして素早く宗介の懐に入ると、膝蹴りを食らわした。


宗介は膝をついて悶絶していると、クロウが宗介の胸ぐらを掴んだ。


楓は付けているマスクを下に降ろし、正体を明かした。


【鳥飼・・さん・・?】


『お前はグレート・エスケープで訓練された人間だろ! それを復讐の道具にするな!』


【あなたに、何が分かる!】


『僕も同じようにグレート・エスケープに訓練されたからだ、彼らの意思を尊重して正義と向き合え』


【放っといてくれ!】宗介は楓に掴み掛かった。


楓はそれを簡単に交わすと宗介を殴りつけた。


宗介は再び楓に向かっていく。


楓はそれも巧みに交わすと、さらに宗介を殴りつけた。


宗介は地面に倒れ込んだまま、大きく息をついていた。



『僕より先に訓練されているはずの君が僕に太刀打ち出来ていない意味が分かるか?』


宗介は倒れたまま、無言で聞いていた。




『2014年から君は今までの間、何も進歩していない』




傍らで戦況を見つめていたブラックカイト(”CROW -the origin-”参照)が少し、身を乗り出した。


『楠木宗介、お前は”復讐”に意識が偏りすぎて、本来の意味を見失っている』


【正義の大義はグレート・エスケープがやればいい】


『グレート・エスケープはもう存在しない』


【・・・・?】


『九十九で壊滅した』


楓は一瞬、あの時の光景を思い出した。(”CROW -the origin-”参照)



『だから、僕たちが彼らの意思を受け継ぐ責任がある』




宗介はゆっくり立ち上がるが、何も言わずに倉庫を後にした。




『いいの?行かせて』ブラックカイトが口を開いた。


『楠木宗介は正義の心を持っている、しかしまだそれを解放出来ていない』


『解放できるかしら』




『内なる正義を呼び起こさせる』









◇翌日:陸奥地検



瑞穂は自分の取り調べ室内で昨日のことについて考えていた。


(誰かがナイトイーグルを嵌めた・・・?)


『一体、誰が・・?』


『え?・・どうしました?』検事補佐官が答えた。


『・・あ、ごめんなさい なんでもないの』


瑞穂は自分の腕時計を見た。 昼前の時刻を指していた。


『ちょっと早いけど、お昼にしましょう』


そう言うと瑞穂は取り調べ室を出ていった。




3




近くのコンビニエンスストアで軽めの昼食を買った瑞穂は地検に戻っていこうとしていた。


何気なしにビルとビルの隙間の細い路地に目をやった時、思いがけないものを発見する。


細い路地裏に、傷だらけの一人の若い男がうずくまっていた。


瑞穂は警戒しながらも男に近づいた。


『あなた、大丈夫?』


男は怯えた表情で滝沢瑞穂を見つめていた。


『こ・・こ・・殺される・・』


『誰に?』


『同僚に・・警察官の同僚に・・』


『どういうこと・・』





『あの日・・オレは・・JACKを撃った』



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