恐るべき子供達計劃、その芽吹きとして

 伊藤計劃のミームを受け継ぐ、ということは実はそんなに難しいことではない。より正確に言えば、「どうすればそのミームを受け継ぐことができるか、言葉で表すのは」難しいことではない。
 安易に答えに飛びつかない冷静な態度で世界を見つめ、物語を愛してそれと真摯に向き合い、あとは多少のユーモアの精神さえあればそれでいい。
 だが、それを態度で示そうとすることはとても難しい。

 伊藤計劃は物語を遺し、彼はそれが人々の中に宿ることを望んだ。ここに集まったのは、その種子が自らの身体深くに根を張った者たち、つまり伊藤計劃の子供達(チルドレン)だ。
 伊藤計劃のミームを受け継ぐんだと、その意思を態度で示すことはとても難しい。しかしそれでも恐れず前へ進むことを決めた、恐るべき子供達なのだ。
 あるいは、伊藤計劃はまだ終わっちゃいないと、世界に対してそう静かに怒鳴りつけてやりたいのかもしれない。もしくは、僕らの口によって伊藤計劃を更に他者に語り継ぎたいのかもしれない。僕らが集った動機は人様々だろう。
 それでも、根っこの部分はそう変わらないはずだ。いくら言葉を尽くしても決して届かない相手に、それでも僕らは、「ありがとう」を伝えたいのだ。

 感謝を。この機会を用意してくれた七瀬さんに。この企画に参加した皆さんに。何より、僕らに物語を授けてくれた伊藤計劃に。
 あなたの物語は、確実に僕らの一部を、それも少なくない割合で成している。

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