中ボスになろう

稲垣博輝21

中ボス始めました

第1話 中ボス始めました 1

「とーちゃん、おかえり」

 

 全身が銀色の毛をした狼男の子供ロストは尻尾を左右に揺らしながら狩りを終えた父親を出迎えた。


 ロストの三倍の背丈と屈強な肉体を持つ父親ギルは、ニッコリと笑いを浮かべて肩に担いでいた鳥コカトリスを地面に置いた。


「このコカトリス、普通のやつの三倍は大きいね」


「ああ、今日は良い知らせがあったから、大きいやつを仕留めることにしたんだ」


「良い知らせ?」


「昼間の手紙な、魔王様からで俺をダンジョンの中ボスに任命するって内容だったんだ」


 ロストにとってギルは自慢の父親だ。 中ボスになったら次々と冒険者を倒して、もっと自慢の父親になるだろう。 ロストはそう信じていた。 


 ギルがダンジョンに赴任する日、ロストは近くの森でお守りとなる幸運の葉を探していた。


「あったー!」

 

 地面に落ちていた、特殊な紋様の形をした葉っぱを拾い上げる。


 幸運の葉は虫が食い、その痕が魔王の紋様に似ている。


 ロストはその葉を持って家に急いだ。


 家の中に入るとギルの姿はない。


「あれ? とーちゃん、どこ行ったんだろ。 きのう、かえりおそかったからまだいるとおもうけど」


 ロストがいつも食事をする卓に一枚の紙が置かれていることに気づいた。


「とーちゃんのてがみだ」


 紙を開き、その内容を読む


『昨日カジノで魔王様から頂いた支度金を全部使った。 魔王様に合わせる顔が無いので、俺は逃げる』




 

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