古典を踏襲しつつ、完成させた最新の正調

 地球と同一の軌道上にあり、太陽を挟んで真反対に存在するリテラという惑星の設定が、子供の頃から親しんだSFの設定を思い出さされ、すんなりと入れる物語です。

 そこに住むナマートリュは、不思議な超能力を持つ美丈夫たちという設定も、馴染みがあります。

 それら古典的なSFの空気を纏いつつも、作者の感性が感じられる展開が飽きさせません。

 徐々に顕在化していく事件、明らかになっていく秘密、主人公に秘められている特別な力など…。

 それらを読み進めていく内に、私が感じたのは、何を以て「人」というのだろうか、という事でした。

 ナマートリュは人にはない特殊な力を持っている、異星人なのですが、異星人というよりも同胞であると感じられるのは、彼らは文化や考え方は違えども、多くは平和なインテリジェンスを持ち、コミュニケーションが取れるからこそ、感じられるのです。

 異星人との交流も、同じく古典SFではよく扱われてきた題材ですが、これを現代風のコミュニケーションでも成立させている所に、作者の鋭い感性があると思います。

 古き良き世界といえば陳腐になってしまいますが、この物語を読むうちに思うのは、温故知新、SFの旗手たる力を秘めた作品だという一点だけ、強く感じます。

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