第6話 ターゲットの正体

 答えは簡単だった。

 

 もう一度Aはターゲットを見た。ターゲットはゆっくりと展望台に上がり、崖の方を向いた。そして、柵に手を乗せる。

 その手には、人形がぶら下がっていた。スナイパーライフルのスコープには見覚えのある人形が目に入って来た。その目に入って来るすべての景色は一気に姿を変えた。あたりの穏やかで、静かな山間の景色はすべて絶望へと変化を遂げた。後少し、いつも通り引き金を引くだけでいい、今まで通りやればうまくいく。それでAのヤマは終わりのはずだった。


 その時だった。ターゲットが何かに気付き、崖にもたれかけていた姿勢から振り返ろうとした。その瞬間、Aは反射的に引き金を引いた。もう、きっと本能だったのだろう。ただちにターゲットは反り返り、そのまま崖の下へと消えて行った。最後にスコープに映った景色は、あの人形だった。


 その時わかったことがある。ターゲットは一人ではなかった。それと、スケープゴートは大事な人を守ってはくれなかった、ということだ。

 

 こうしてまたここに一人の「プロの殺し屋」が生まれたのである。

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