part.3-4【シャドウシザーマン瞬殺ルート】
シャドウシザーマン。魔王直属の暗殺魔族の一人である。その強さはAランクに位置付けられたの上級冒険者の首をたやすく撥ねてしまうと言う設定を聞いたことがある。
ちなみに「魔王はパート1でラタが倒しに行ったんじゃないの?」と思われているだろうが、実は魔王の生死はこのイベントのフラグと関係ないので問題はない。
「グゲゲガ。まずは弱ったそこの女から殺してやる。覚悟し……」
シャドウシザーマンは得意げにアシテッドに目をやる。おそらくこの後、アシテッドの首をはねるつもりなのだろう。
――まぁ、そんなのアシテッドと僕にはお見通しであるが。
「ラタ。死んだライオン魔獣を燃やして」
「了解」
僕は予定していた通り、ライオン魔獣を魔術で燃やす。するとライオン魔獣は、壮絶な爆音を鳴らして破裂する!
「ぐわーーーーーーーっ!?」
「なんか死んだライオン魔獣が爆発したー!? そしてシャドウシザーマンが巻き込まれたー!?」
シャドウシザーマンの立ち位置は、死んだライオン魔獣に一番近かった。そのため爆風を諸に喰らって速攻で死んだ。哀れな死に方である。
シャドウシザーマンのそばにいた僕達も巻き込まれそうな気もするが、上手い事めっちゃギリギリ爆風の届かない範囲に立っていたので事なきを得た。いやぁ、運が良かったね。
「よし、『凶暴で巨大なはち切れそうな体を持つ、死んだライオン魔獣』が予定通りはち切れてくれたわね。ドロップアイテム回収しますわよ」
「どうやって予定していたのかも気になるけど、『はち切れそうな体』って爆発するって意味なの……!?」
「ええ。それにあのライオン魔獣は『凶暴で』を付ける事でこっちに自動で近づく機能が付き、『巨大な』を付ける事で威力を増幅させたんですのよ」
「あのライオン魔獣、アシテッドが召喚したの……?」
「むしろ私以外にあんなのを召喚できる人はいると思います?」
「自分の変態性を自覚してんじゃねぇよ。してるならわきまえろよ」
今回のダンジョン攻略で、最後の最後でシャドウシザーマンが出てくることはもちろん把握していた。というか毎回毎回無視される哀れな雑魚ボスなので、僕達の界隈では有名な敵だ。
しかし今回は完全クリアを目指すと言う事でドロップアイテムの回収が必要となった。そのためアシテッドは早い段階から準備をしていたのだ。
アシテッドは予め燃やした時の爆発力が丁度いい『凶暴で巨大なはち切れそうな体を持つ、死んだライオン魔獣』を配置したり、アシテッドのHPを減らしシャドウシザーマンのAIルーチンを誘導して立ち位置を調整したり様々な先手を打った。偶然の産物じみたこの流れも、他のイベント等との兼ね合いを計算して編み出した技術であろう。
ちなみにだいぶ前のルートだとドランを爆発させた事もあるらしいが、流石に完全クリアでそんな外道プレイはできなかったようだ……。
「とにかく、あの爆発が今回の攻略で一番効率が良かったのであの手段を取らせていただきました。事実、強力なモンスターの瞬殺もできたでしょう?」
「……『死んだライオン魔獣』だった意味はあるのか?」
「なんか、そっちの方が面白いし……」
「理由が意味不明だし、面白さのポイントも意味不明」
スピードランとは関係ない部分にネタを仕込むのも、アシテッドの流儀のようだ。
====
「よし、これで水のオーブと風のオーブが手に入りましたわ。エクスカリバーも変化して『asdfmklertsjkのオーブ』に変わりましたし、これで試験の条件はクリアですわ」
三つのオーブを手に入れたアシテッドは、笑顔を浮かべる。このステージの記録更新ができた事が嬉しいのだろう。
「最後のオーブ、名前が明らかに偽物なんだけど……?」
「大丈夫。内部判定では炎のオーブと同等の効果ですので」
「内部判定って何だよ」
最後のオーブが炎のオーブではなくバグアイテムなのは、まぁスピードランだから仕方ない事だ。レギュレーションによっては反則になる行為だろうが、ただ完全クリアしたいだけのアシテッドは無視したようだ。
「うわー、joasdgunudfmp! ドラン様、このasdfmklertsjkのオーブを一2rbuf38243お■■■■■■■してもよろしいですか!?」
「ほら、所持オブジェクトが変化したからルッツさんの反応も変化したでしょう? これがちゃんと変化した証ですわ」
「明らかに精神に異常をきたしてるっ……。絶対やばいだろ、ルッツが色々とやばいだろ!?」
あからさまなバグのせいで、ルッツの精神も大分バグり始めた。これ以上洞窟にいるとのちのちの進行にも影響するので早々に切り上げよう。
「まぁまぁ、落ち着こうドラン。とにかくここを出て試験の合格を貰ヤヤヤヤヤヤヤヤヤッフーーーーーーーーッ!!!!!!」
「ヤヤヤヤヤヤヤヤヤッフーーーーーーーーッ!!!!!!」
「■■■■■■■■■ッAーーーーーーーーッ!!!!!!」
僕はドランの好感度を上げる慰めを行いつつ、腰ワープを行った。もちろんアシテッドとルッツも腰ワープ帰還だ。これぞ、試験会場の洞窟から拘束脱出するための必須テクニックであるっ――!
「か、会話中に腰ワープで帰るなぁーっ!?」
この方法だとやはりドランは置いて行かれるが、まぁ少ししたら帰ってくるので問題はないだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます