第7話 キャラ弁とはなんぞや
キャラ弁。
あ、このタイトルでもうお分かりですよね、うん。
そうなんです。
もうだいぶ前なんですが、子供のお稽古ごとの一環で、その公演があるもんで、子供たちとその親も一緒に、午前と午後、通し練習ってのがありまして。
あ、一応、音楽系です。
夏休み、真夏も暑い盛りのことでした。
練習いうても、主役は子供たちなわけで、親は子供を連れて行くことそのものが仕事みたいなもんです。
私はもちろん、その時すでに小説の毎日更新をやっておりましたから、そんなもんについていって何時間も(下手したら六時間とかですもんね)、無為に使わされるのが非常につらくて。
待ち時間はロビーでひたすらルーズリーフにシャーペンで小説を書きまくっていたのを覚えております。
ひどいね〜。
他のお母さんとか、嬉しそうに舞台に立っとるお子たちの動画とってみたり写真とってみたりしてはんのを
シャーペンで書くと、思った以上に文字数が進んどらへんのんですね、あれ。だもんで、「結構かけた〜!」とか思ってても、帰ってからPCに起こしてはがっかりしてましたねえ。
ほかのお母さんがたは「あの人、なにしてはんねやろ」状態やったろうと思います。
いやあ、そんなんきかれても正直になんか答えられへんけども。うははは。
ま、そんなことはええんです。
問題はここから。
ある日、それは丁度、子供の誕生日やったんです。
夏休み中に誕生日があると、友達からプレゼントがもらえなかったり、パーティーなんかもやりにくかったりしますでしょ。
もちろん、家族ではそれなりのことしますけどもね。
お昼になって、先生がたも交えて子供たち、お母さん方も一緒にお弁当の時間になりました。
例によって私、お弁当はダンナに丸投げでした。
子供とは少し離れたところで座ってたんですが、先にあちらから「ええっ、すごい! なにこれ」というほかの子の声が。
「なんやろなあ」と思いつつ、ちらっと見たら、どうやら娘の弁当がキャラ弁になっとるらしい。
ありますやん、ほら、クマの可愛いキャラクターが。
なんやたら〜んとリラックスしてる系の。
あれあれ。あれです。
「へ〜、そんな手の込んだことしてたんや。さすが○さん(ダンナ)、主婦の
どーんと。
いてはったんですよ。
娘のんとまったくおんなじ、リラックスしたクマさんのご尊顔が!
ひ――!
二度見、いや三度見しましたね。
しかもちゃんと、お顔がくずれんようにと上にアルミホイル乗せてあるという芸の細かさ。
ほかにもタコさんウインナーとかなんとか、全体がお花畑状態。
ミニトマトやらブロッコリーやらが、きゃっきゃうふふ。
私が幼稚園児であるならば間違いなくココロ踊るであろう細部へのこだわり。
いや私は「踊る」というよりかは「震える」感じやったけどもね。
それも「ぞわぞわ」系でね!
なにこれ。
なに
アンタはいったいなにもんなんやあ!
ちょっと絶句する私の弁当をのぞきこみ、周囲の子供たちが「こっちもや! すご〜い!」とか言うし。
めっちゃ恥ずかしい。
「え、作られたんですか?」
って当然、先生からもきかれるし。
「いえ。ダンナです」
と、どきっぱり答える私。
こういうとき、変な見栄張ったって一文にもならへんし。
こういうとこで下手うつと、あとあとろくなことにならんので、正直に行くんが私の流儀です。
けど、帰宅してダンナにそう言うたら、
「なんやあ。『はい、私です』言うといたらええのに〜」
とか、けろっとした顔で言う。
言えるかいな! そんなこっ
むしろ逆パターンな羞恥プレイやないかいな。
少なくとも私の辞書に、子供はともかく自分のんまでキャラ弁つくるっちゅうタグは載ってへんっちゅうねん。
聞いたらなんや、ネットで作り方を見つけて、前々から準備しとったんやそうな。
いやまあ、娘かわいいんもわかるけども。
ええかげんにしよし。
っちゅうかそれやったら、自分で連れていかんかい!
ところがダンナ、ま~た例の病気が出とる。
「そんなん言われたら、今度みんなに会うとき、恥ずかしいやん。『あ、あれ作ったお父さんや』って思われるやん……!」
「…………」
まて。
ほんならなんで作るんやああ!
私に断りもなく作っといて、真実を話したらなじられるんかい。
意味わからへんし。
どうせえっちゅうねんホンマ。
この時ばかりはほんま、ちょっとはたいたろかと思いました。
仕方がないのでもみもみ攻撃でまた悲鳴を上げさせましたけどね。
ふん!
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