第4話




 白金の髪に右眼の瞳が藍色、左目の瞳が金色のをした華奢な身体のの姿が現れた。

 の服装は、魔術師がよく着用しているフード付きの軽装だった。

 それを眼に留めて、ラインヴァルトの身体は小刻みに震え出す。


「――――――――」

 歯の根が合わないる出血多量で意識が朦朧としているが、そのが放つ悪意と鬼気が原因だった。

 それ以前に、ラインヴァルトを戦慄させた事実が一つあった。

 ラインヴァルトは、いま出現したを知っていた。

 もとい知っていたというより、程度だ。


 それらのは、ほとんど噂程度のものだ。

 だが、――――――――中にはが存在している。

 そのが、今、命の灯が消えんとしている

 ラインヴァルトの眼の前に姿を現した。

 その本物の中の一つが、今、命の灯が消えんとしているラインヴァルトの眼の

 前に現れた。

 

 ――――――。

 



 崇めるべき対象として、――――

 討伐すべき対象として、――――

 仮初めの信仰対象として、――――

 そして、ラインヴァルト出身地域では『怪人』と奉られている。

「・・・・『怪人』・・サトゥルヌス・・・・・」

 ラインヴァルトがその呼称で呟く。



 そのあまりにも現実離れした状況に、怒り狂うべきなのか、泣き叫ぶべきなのか、判断出来なかった。

 いっそ、正気を失えばどれほど楽な事だろうか。

『我をこの場所へと呼んだ汝よ――――汝は、我から授かろうとしている

 力を使い、冥府魔道の闇を纏い、暴虐の嵐が荒れ狂う戦場へと怯まず進み、

 荒れ狂う鉄鎖をうち砕く覚悟はあるか?――――)」

 天使のような美声で語りかけてくる。

「あ・・・・ぁぉ・・・・」

 こぼこぼと出る血泡のせいで、発音が上手くできない。だが、その自分の気持ちはまだ決まってはいなかった。

 生きるか死ぬかの時点で、よりによってまさか戦場怪談などで語られている、

 の者が、まさか自分の目の前に現れるとは思ってもいなかった

 ためだ


 もし、この事が分かっていたらそれなりの選択を用意はしてはいただろう。

 ラインヴァルトは、その様な状況だからより悩んだ。

 未知の力を手に入れて、死んでいった戦友達の仇と安らぎを得るか―――。

 それとも、このまま朽ち果てるか―――。





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