モノを投げた



胸が焼けるような

情緒の激しい自分に呆れる

自分は悪く無いと

心の表面では思い

心の片隅では自分も悪かったと

懺悔の言葉を述べる



モノを投げた

あの子に当たって血の気が引く

感情に任せすぎた結果だ

手が震えるのを必死に抑える

痙攣を繰り返す手は止まらなくて

あの子からは…

真っ赤な花血の池が咲いていた。


私は悪くない悪くない

と必死に狼狽える

気持ちの整理がつかないまま

あの子が悪い

私は正当防衛した

…ただそれだけ


けれども

どんなにそう言い聞かせても

あの子の倒れた姿が

私の脳裏に焼きついて離れない

怖いんだ


五月蝿い五月蝿い五月蝿い!!

あの子がどうなろうと私には関係のない事だ

私が気にしないでも大丈夫

大丈夫大丈夫大丈夫


また、モノを投げた

無残に壊れたモノを拾い上げる

こんな脆いモノであの子は死なないだろう

そう思って

自分の怒りの矛先をモノに向けた


――どれだけ教えれば学習してくれる?――――


手紙が来た

あの子は死んだらしい

私の苛立ちによって

読み終わった瞬間から

声にならない叫び声をあげる


同時に後悔する

私が私が私が私が…私が

私のせいであの子の未来を奪った

そう思うと自分自身への

苛立ちの感情が芽生えた


苦しい苦しい苦しい

川で溺れるような苦しさと

どうしようもない

怒りを捨てたかった

部屋の壁を穢い爪で引っ掻く

それでも苛立ちと似ても似つかない感情は

心の奥底から私を蝕む

そして私は


再びモノを投げた

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