第2話

町は焼け爛れた建物たちが立ち並ぶところにひっそりと存在していた。


旅人の入った町は旅人の心と対照的なまでに明るく小さいながらも栄えている健気な町であった。


商店街は賑わい、外には人が多く、店は品物で溢れかえっていた。旅人が以前暮らしていた町とは180度違う町並みであり、それに旅人は少しばかりか恐怖を感じていた。旅人は人が苦手であったからだ。


しかし旅人はここで一つ用事を済ませなければならなかった。それは資金集めであった。


旅人と言うものは旅をするだけでは生活が成り立たない。冒険する者、旅をする者達は道中での狩り、収集で獲た物を町で売買したり、町の掲示板で貼られているような紙に書かれてある任務を請け負って、事件解決に奔走したりする。


旅人も彼らと同じようにここで少々資金稼ぎをする予定だった。旅人は心は弱いが、争いごとには非常に強い。戦闘術に関しては概ね会得しており、その中でも剣術の腕は確かだ。


どんな兵でも腰に加えた剣一つで討つことができた。人と交渉するするのは苦手だから交易業には向いていない。かといって町を拠点とする傭兵でもないため、魔物を倒して細々と稼ぐのも向いていない。だからこそ強者揃いのならず者たちを短時間で倒して、多くの賞金が得られる任務が一番旅人には向いていた。


よって旅人は町の中では賞金稼ぎへと変貌する。しかし賞金取りとして数々の討伐をこなしていくほど、旅人の存在は他方に知れ渡るようになり、旅人の強さは次第に衆人によって好奇と疑念の目で見られることが多くなった。


そのために旅人は自己を隠すために目立つ行動を控えたり、中身が分からないように全てを布で多いかぶせるような服装になっていった。


旅人はそれほどに目立つのを拒んでいた。しかし人は隠されているものほど好奇心が擽られてそのベールを剥がしたくなる厄介な生き物だ。だからこの町に長居することはできない。


旅人は手早く賞金を得たい一心でならず者の情報を持っている酒場へと入った。


酒場に入れば商人は必ずこう尋ねる。


「おや、旅人かい。お前さんは何しに旅をしているんだい。」


「旅人だからただ単純に旅をしている。それだけだ。」


旅人はそう言ってカウンター席に座った。

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