Gift of Nightmare【EP2】

野良・犬

プロローグ


 何もかもがデカい。

 もし、この世界を簡潔に説明しろと言われたら、1つはそんな言葉だ。

 人は大きさに頼る事が無かったから…。

 頭で考える事が出来たから…。

 人は大きさよりも技術という力を…、集まって団結する事で個々の力を束ねる団結力を手に入れた。

 人としての姿を保ちつつ、自分たちよりも大きな敵に立ち向かえるように、その技術を磨き上げていった。

 時には獣、時には自然、時には人間。

 その形は、両方の世界とも変わる事は無い。


---[01]---


 両者ともその基盤、土台を理解し、固めた事で、今の生活を手に入れている。

 他者から奪われない様に、自分たちの土地を守る。

 自然に負けない様に、それに耐えうる空間を作る。

 獣に襲われない様に、その技術を磨く。

 でも…それでも、人間とはなんて小さな生き物なのだろうと思えてしまう。

 今、私の目の前に広がる光景…、それはこの世界の縮図だ。

 俺の世界でも起こりうるモノだが、それは今、目の前に広がるモノのほんの一部に過ぎない。

 だってそうだ…。

 あんなモノを俺は見た事が無い。


---[02]---


 大粒の雨粒が、壁でも築こうとするかのように降りしきる…、その光景の中にアレはいた。

 見上げる程の巨体、中途半端な剣なんて弾き飛ばす強固な鱗、全てを薙ぎ払う尻尾に、地面を抉る鋭い爪。

 あんなモノは創作物の中でしか見た事が無い、一言で化け物…怪物だ。

 つい昨日まであった街が、今はただの瓦礫の山を作っていく。

 その光景は世界の縮図…。

 力を持たない者は、持つ者に倒される…。

 弱肉強食、どんなモノにも繋がっているその言葉を、私は再び味わう事になった。

 向かって行っても死ぬだけなら…、どうしろというのか。


 ・・・、逃げる。

 ただ…、ただそれしか…。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る