余命十五年のチート転生

三太華雄

異世界転生の始まり

第1話 平凡

 ――どうして俺の人生は平凡なのだろうか?

 

 答えは簡単、俺自身が平凡だからだ。


 佐竹健太は、いつものように自問自答と自己嫌悪を繰り返す。


 顔も平凡、頭も平凡、運動神経も平凡、家庭も平凡、人付き合いは……保留。

 こんな自分に平凡以上の生活を送れるわけがない。


 中学生活が終わるこの一年で、何かを変えたところで変わるわけもなく、変えようと努力する気も起らない。

 今年も同じように学校にも行かず、家に引きこもってネットを開き、非凡になれるオンラインゲームの世界でやりたい放題な事をする生活に明け暮れるだけだ。

 受験も高校も知ったこっちゃない。


 自分とは違い社会貢献に勤しむ両親は、人に迷惑さえかけなければいいと、不登校の事にも何も言ってこない。

 だから何もしない、世間から見れば典型的なダメ人間だろう。


 だが、そんな自分にも一年に一度だけ特別になれる日がある、それが今日、五月二十日。佐竹健太の十五歳の誕生日だ。

 どんな底辺の人でも優秀な人でも必ず持っている特別な日。生まれたというだけで祝われ、そして恒例行事でプレゼントがらえるという大変素晴らしい日なのだ。


 そして今年はちょうど節目の十五歳。

 十五歳というのは他の年よりも少し特別に思える年だ。

 中学さえ卒業すれば働ける年でもあるし、この年から少しずつ自由が増え始める。

 世界観や年代が違えば成人扱いもされる、この年齢はいわばちょうど大人への第一歩というとこだ。


 親はいつものように仕事でいない、健太は誕生日プレゼントとしてテーブルに置かれてある現金三万円を手に取ると久々に家を出る。

 誕生日プレゼントが現金だなんて、と思う人もいるかもしれないがはっきり言ってこっちの方が好きなものを買えるから非常に都合がいい。

 この前家を出たのはおよそ 二ヵ月前、親の財布から金をくすねて新作ゲームを買いに行った時以来だ。


 健太はあの時と同じように同級生に見つからないように顔を眼鏡とマスクで隠して、ゲームショップまでの道を行く。


 ――順調順調。


 行き慣れた道からゲームショップへ向かい、ゲームを購入する。あとは来た道を帰るだけだ。

 もう慣れているから間違うことはない、もしいつもと違うとこがあるというなら、ちょうど交差点を渡ろうとしているところに大型トラックが突っ込んできたことくらいだろう



 ――…………へ?トラック?


 まるで驚かすつもりで鳴らしてるんじゃないかというくらい、馬鹿でかいクラクションに、驚きのあまり思考が止まってしまった健太には避ける、逃げる、という選択肢はなく、そのまま無残に轢かれていった。


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