何度でも読み返したくなる、ふしぎですてきな夜の旅

家族のために強い男になりたいと願う少年が、人間の言葉を話すツヤツヤ毛並みの黒猫ムギさんと一緒に、コーヒーを飲みながらゆったりと夜を旅するすこしふしぎでとっても可愛い物語です。

ひとつひとつのエピソードは短くてサクッと読めるのに、得られる読後感はそのお手軽さに大きく反比例しているように感じました。
読むほどに物語のあたたかな空気が流れ込んできて、心の中を換気してもらっているような心地よさがどんどん強くなっていくのです。
私は「ムギさんとチャーハン」のエピソードで、心の空気が綺麗なものに入れ替わったのを感じました。そこからはもうひたすら、心の風通しが良くなる一方です。

少年とムギさんのやり取りは、ずっと眺めていたくなるほど面白くて愛おしかったです。彼らの周りに集まる人々も、みんなとってもユニークで可愛らしいのです。

たくさんの出逢いと交流を繰り返し、少しずつ豊かになっていく少年の心を見守っていると、自分の心まで柔らかくなっていくような気がしました。
これはぜひ我が子にも読ませたいなぁ。夜寝る前に1話ずつ、大事に読んで欲しいなぁ。ムギさんたちの夢を見て眠って欲しいなぁ。そうしたらきっと、浪漫と思いやりが溢れる優しい子に育つだろうなぁ。
……なぁんて、子供どころか伴侶すらいないくせに、つい真剣に考えてしまいました。
それくらい、夢が膨らむお話なのです!

ふしぎですてきな夜の旅、皆様もご一緒してみませんか?

その他のおすすめレビュー

犬飼鯛音さんの他のおすすめレビュー66