第16話 歩く砦(2)

 団長に宣戦布告した俺はそのまま団長を兵舎裏の森に連れてきた。森の中は、まだ高い太陽の光も枝葉を伸ばす木々によって遮られ、昼間でもどこか薄暗くひんやりしている。ゴッズの特訓にも使っていた広場だけが、ぽっかりと口を開けたように日だまりになっていた。


 遅れて、医務室からオリヴィエを連れてきたカーチスがウインクしながら茂みの間に消えたのを確認すると、俺は団長と向かい合った。


「で、ルールはどうする」


「時間制限はなし。フィールドはこの森の中。武器や戦術の制限は無し。勝利条件は、どちらかが降参するか戦闘不能になるまで、で」


「いいだろう。じゃあ始めるぞ」


 団長は闘気を纏うと、その巨体に見合うだけの大きな騎士剣を構えた。


 対して、俺も数歩下がって騎士剣を鞘から引き抜く。正騎士に与えられた真新しい剣の柄を、小指からきりりと握り込みながら集中を研ぎ澄ます。


 開始と共に団長はゴッズを使った人外の加速で突っ込んでくるだろう。最初が肝心だ。


「いざ」


 俺が小さく呟く。


「行くぞ」


 団長が宣言するように告げる。


 表情を変えず、神経を張り詰めたまま、殺気を解き放とうとした時————。


「待ってください!!」


 闖入者が現れた。兵舎の方から茂みを掻き分けて出てきたのはクラッドだった。


「俺も戦わせてください」


 息を切らしながらも、クラッドは団長の顔をはっきりと見た。


「どういうつもりだ」


「俺は団長に去年正騎士にしていただきましたが、この性格なのでパーティーに参加することが今まで出来ませんでした。でも、やっと、一緒に戦いたいと思える騎士に出会ったんです」


「ほう」


「はい、ケイン達のパーティーに参加したいと思っています。ですから自分が所属するパーティーのヒーラー獲得のために、俺が団長と戦うことは理にかなっていると思います」


 いつもの不機嫌そうな表情は鳴りを潜め、真摯な眼差しが団長に向けられた。団長とクラッドの関係を深く聞いたことはなかったが、クラッドが異例の若さで正騎士になっているのはどうやら団長の権限に依るもののようだ。


 どうやってこの勝負を嗅ぎつけたのかは分からないが、性格の合わないカーチスと共闘して敬愛する団長に刃を向けるのだ。ただならぬ思いがあるのは分かった。


「こいつはそう言っているが?」


 団長は確認するように俺を見た。


「......えと、はい。2ヶ月ほどですが、一緒に技を磨いた仲ですし、彼は同期の正騎士達よりも格段に優れています。いい戦友にもなれると思います」


 突然パーティーに参加すると言い出した事に面食らったが、なんとか取り繕う俺。訝しむことなく頷いた団長は、クラッドに向き直った。


「そうか、なら来い。私に成長を示せ」


「はい、行きます!!」


 言うが早いか、クラッドは団長に走り寄って抜刀を仕掛けた。これは、攻撃するときにカタナが大振りになりがちなクラッドの弱点を克服するために、俺が提案した攻撃方法だ。


 腰の鞘から団長の顔に向かった斬撃は鮮やかな弧を描いたが、団長が無造作に切り上げた騎士剣は、まるでそこに到達することが決まっていたかのように、簡単に軌道に割り込んだ。


 クラッドのカタナは肉厚といえど、団長が振るう巨大な騎士剣よりはよほど軽い。しかし、打ち合ったカタナをクラッドが引き戻すよりも早く、団長は切り上げた剣をそのまま上段から振り下ろす。


 クラッドの速攻に若干反応が遅れながらも、俺も団長とクラッドの元に突っ込んでいった。


 団長が振り下ろす剣がクラッドの兜に到達する直前に追いつくと、胸の横に引き寄せていた剣を突き出した。


「む」


 団長の振り下ろす剣に、真横から突き出した俺の剣が接触して軌道が逸れる。


 クラッドの肩を掠めた団長の剣に、すかさず俺の剣を押さえ込むように合わせ、下段の鍔迫り合いに持ち込んだ。


「下がれっ」


 団長の動きを一瞬抑えても、次の瞬間にはその馬鹿力で弾き飛ばされる。それを見越して叫んだ俺の意図を察して、クラッドは無言でさっと後退した。


「ぐぅぅ」


「今のは褒めてやる」


 鍔迫り合いの最中さなかでも、張り詰めた様子の見えない団長は一息で剣を振り上げた。上から抑え込んでいた俺の剣も一緒に跳ね上げ、そのまま団長は剣を振り下ろした。


 勿論俺も、団長の剣の鍔に合わせて右斜めに斬りおろす。姿勢を沈め、今度は団長に押さえ込まれる形で鍔迫り合いになった。


 土を抉りながら押し込まれる俺を見て、再び抜刀の構えになったクラッドが進み出た。俺の左手から飛び出すと、最初の一撃と同じように団長の顔を目指して銀色の弧が引かれる。


 しかし、剣ごと押し込んだ俺をそのまま突き飛ばすと、団長は後退して身体を反らしながらあっさりとクラッドの二撃目も躱してしまった。巨体に見合わない軽快さだ。


「お前はやる事が単調だ」


 切り上げたカタナに左手を添えて振り下ろすクラッドに対し、団長は下段から斬り上げつつ体を密着させ、俺にしたのと同じように突き飛ばした。


 クラッドが割り込んだ隙に体勢は立て直したが、団長までの距離は一歩二歩で詰めることはできない。


 ならばどうするか? ゴッズを使う。ここだ。


 最初にクラッドと団長に割り込んだ時と同じ様に、胸の横に引き寄せた騎士剣に体重を乗せながら突き出す。


そして同時に強く念じる。


『——移れ』


 俺の視界は一瞬でクラッドの背から団長の身体の目の前に切り替わった。


 転移のゴッズ。簡単に説明すると自分限定のワープ能力だ。まだ未熟ゆえに移動距離は2、3メートルが限度で頻度も数分に一度発動させられるかといったところだが、相手との間合をいきなりゼロにできるのは、団長相手でも十分に初見殺しになったようだ。


 体の前面を無防備に晒した団長の胸に騎士剣がスッと差し込まれる。


 獲った、と思った。


「——甘い」


 次の瞬間、団長の手首がぐるりと回り、下に垂れていた剣が半円を描きながら俺の剣の腹に接触した。


 だが、俺の突きはわずかに逸れただけで、団長の右肩にヒットした。鎧に剣が突き立ち、刃が肉にまで到達する後味の悪い感触が伝わる。


 普通の騎士ならそのままひっくり返る所だが、団長は崩れ落ちながらも剣を差し出した俺の右腕に左手で手刀を打ち込んできた。鎧の肘関節が「ざり」と砕ける音がして、自分の右肘に鈍い痛みが走る。


 とっさに右足を蹴り上げて、団長の剣を蹴り飛ばす。俺の肘を壊したのを確認したように崩れる団長を見届けつつ、俺も後方に飛び退った。右手で握っていた剣だけは辛うじて手放さなかったが、利き腕を潰されたのでもう振る事はできないだろう。


「くっそ」


 呆れるほどの団長のタフさに、いつかと同じように毒づく。剣を手放し、右肩から血を滲ませてはいるものの、起き上がった団長は既に徒手空拳の構えをとっていた。


「あんた、右腕」


 続いて復帰したクラッドが、俺の右腕を注視した。


「これはだめだ」


「じゃあ俺の援護をしてくれ」


 団長に向かって行こうとするクラッドを、無事な方の左手で制する。


「お前が一番団長の性質を分かってるだろ。俺より非力なお前じゃ肉壁にもなれない」


「でも」


「いいから」


 クラッドをそのまま押し留め、俺は団長の前に進み出た。


 エルフは基本的に非力で魔力が高い。エルフの血を引くクラッドは高身長だが、人間の俺よりも幾分か筋力が低いのだ。圧倒的なパワーを誇る団長相手なら、負傷していても俺が前に出る方が有効だと踏んだ。


「いい判断だ。その跳ねっ返りと組むと言うだけはある」


「以前もこんな事があった気がしますね」


「そうだな。お前が私のゴッズを知らなかった時だな」


「ですね。ただ、今回は最初から使っているでしょう?」


「成長は認めてやる」


 ふん、と団長は笑った。


 団長の恐るべき点は、190cmの巨体から生み出される“人並み外れた力”だと最初は思っていた。しかし、団長を団長たらしめている要素は、覚醒者のゴッズによるものだった。


『強靭の加護』と名付けられたそのゴッズは、対象者の身体能力を際限なく強化する。巷にも「強化」の魔法は存在するが、ゴッズの恩恵はそんなぬるいものでは無い。


 そんな人外の運動能力に、才能を認められた程度の新人騎士が対抗できるはずもなかったのだ。だが、今回はその限りではない。


「なら降参するというのはどうでしょう?」


 強がりではない強気の言葉が口を突いて出た。


「私の意思は変わらん」


「ですよね」


 しかし、団長も引き下がる気配は見せない。


 武装解除したとはいえ、徒手空拳の団長に付け入る隙は見受けられない。右肩に突き込んだ剣は鎧を突き破ったが、筋を断つ程ではなかったようで、出血を気にする様子もない。


 その点、俺は剣こそ手放していないが右腕を潰されてしまった。左手に持ち替えてはみたものの、利き手ではないため左手では剣は扱えない。


「クラッド」


「ああ」


 クラッドを背にした形で縦に並ぶ俺たちは目配せをした。

「では次だ。いくぞ」


 剣を振るうことができなくなった俺が、仕方なく剣を鞘に納めるのを見届けると、団長は再び闘気を膨らませた。背筋に電気が通ったような緊張が生まれる。


 小さな気迫と共に団長が土を蹴った。


『——止まれ』


 左手を突き出し、同時に俺も呟いた。


 次の瞬間、視界から掻き消えそうなほどの加速で突っ込んできた団長は、俺の目の前に展開した見えない壁にぶつかって静止した。


「!?」


 俺のもう一つのゴッズは『断絶』。これも俺の未熟ゆえに、展開出来る規模も時間も頼りないが、いくら物理的に強化された団長でも通り抜けることの叶わぬ盾となる。


 一瞬ではあるが隙を見せた団長に、クラッドの三度目の抜刀が炸裂した。


 閃いたカタナは団長の側頭部を打ち払い、返す刀は脳天に落ちた。特に2撃目は強烈で、最低限の装飾だけが施された団長の兜はパックリと割れた。


 がくりと下を向き、よろめく団長に、だめ押しとばかりに俺が前蹴りを決めて蹴り飛ばす。


 俺とクラッドは再び団長と距離を取った。


「降参する気はありますか」


「手足の一本でも取られれば検討しよう」


「......なるほど」


 額と右肩から血を滲ませる団長はいよいよ満身創痍といった様子だが、兜を脱ぎ捨てたその瞳には炎が宿ったままだった。


「あんた、ゴッズは」


「もう使えないな。俺の練度じゃ一回こっきりだ」


「じゃあ今度こそ俺が出る」


「だめだ」


「なんでだよ」


「さっきも言っただろ。それに俺はもう攻撃ができない。今度こそお前の盾になるしか俺の使い道はない」


 淡々と言葉を並べる俺にしぶしぶ頷くと、クラッドは再び抜刀の構えに入り、俺の背中に隠れた。


「もう行っていいか」


 森特有の、少し湿った土の感触を確かめていた団長は、瞼に垂れた血を拭うと真っ直ぐにこちらを見た。俺が見た中で最も派手な傷を負った団長は、それでも呼吸1つ乱れていない。


 しかし、こちらの優勢が変わるわけではない。兜の下で、俺は細く笑った。


「はい、行きましょう。カーチスもそろそろ暖まってきた頃なので」


「む」


 やっとカーチスが居ない事に思い至ったのか、団長は周囲の木々に視線を配ったが、もちろん見つかるはずもない。


 気にしても仕方がないと直ぐに割り切ったのか、団長は再び徒手空拳の構えをとった。


「骨の一本や二本は覚悟しろ」


「初めからそのつもりです」


 身体を深く沈め、左手を突き出す。右手を腰に隠すようにした団長は、またもや視界から掻き消えそうな勢いで突っ込んできた。


 動きそのものは単調だが、100kg超えの巨体が目にも留まらぬ速さで襲い掛かってくるのは、大砲を撃ち込まれるのとそう変わらない。


 回避は勿論、防御の手段すら失った俺は、団長が振るった拳をなす術なく腹に埋め込まれた。


 次の瞬間には体がくの字に折れ曲り、足が地面から離れる。宙を待った俺は、広場のほぼ真ん中から端まで吹き飛んだ。茂みをいくらか突き破った所で止まったが、腹部には痛みというより痺れに近い感覚が残っていた。


 地面と水平飛行するなど、一生のうちにそうあるものでもないだろう。砲弾というなら俺の方が近いかもしれない。


「調子はどうだー?」


 確実に折れたあばらを抑えながら呻く俺に、頭上から声がかけららた。


「カーチス、か。最悪だな」


「じゃあ治してやるよ」


 木の上に座り込んでいたカーチスは笑うと、広場の端の方に佇むオリヴィエを顎で示した。姿勢を少し起こして、茂みの向こうの彼女を見る。


 彼女は俺の方など向いていないが、右手が仄かな燐光を纏っていた。


 いつもの微笑ではなく、痛ましそうな表情を浮かべる口元がわずかに動く。


 続いて、右手から漏れ出た光が俺に降り注いだ。肘の鈍い痛みと腹部の痺れは潮が引くように去った。


 医務室通いの日々から解放されて久しい俺は、久しぶりのオリヴィエのヒーリングを受けて彼女に見惚れた。1人で団長と戦うクラッドのことも忘れる程に。


「流石だ......」


「まぁそういうことだ。さっさと戻れー」


「ああ」


 勢いをつけて起き上がると、再び茂みを掻き分けて広場に出た。しかし、既にクラッドと団長の戦闘は決していた。


 カタナは広場中央に深々と突き刺さり、その横でクラッドは地面に膝をついて吐血している。


 団長は頰に小さな刀傷を作っていただけで、クラッドを見下ろして腕を組んでいた。


 俺が作った決死の隙は、かすり傷一つにしかならなかったらしい。流石に3度も見れば、同じ軌道の抜刀術を捌くことなど、どうと言う事もないのだろう。


「あの一撃はまともに受けただろう。よく動けるな」


 広場の端に佇むオリヴィエにちらりと視線を投げながら団長は言った。


「根性だけが取り柄なので」


 俺は肩を竦めてとぼけてみせた。


「まぁいい。回復の手段についてはルールを設けていなかったからな。骨が折れても治るなら——心を折るまでだ」


 いうが早いか、団長はいつの間にか回収していた騎士剣を体の横に構えて突進してきた。


 防御などとんでもない。団長が土を蹴る前に俺は真横に跳躍した。


——剣を振るった風切り音が、一瞬前まで俺が立っていた場所で鳴る。


 最大限に拡張した知覚で次の団長の一手を見切ろうとした俺だが、その前にやっと動き出したカーチスの鉄球が団長に襲いかかった。


『弾けろ』


 団長は剣を横薙ぎに振るった姿勢のまま、首だけを動かして俺を見た。真正面から飛来するその小さな輝きを無視して俺に追撃しようとしたが、鉄球は着弾したと同時に団長を大きく弾き飛ばした。


 突然重力に忘れられたかのように、空中に投げ出された団長は、それでも地面に着地するやいなや、俺から開いた10m近くの距離を、瞬き数回程度の速度で詰めてきた。


「やばすぎるだろ」


 泣き出したい気持ちになりながら右手で騎士剣を引き抜き、左手を翳して叫んだ。


『止まれ!!』


 団長が担ぎ上げた巨大な騎士剣が俺の目と鼻の先で見えない壁にぶつかる。火花が散った軌跡に向かって、俺も体に馴染ませた3度目の突きを繰り出した。


 今度は、両腕で剣を振り下ろした団長の左肩に深々と突き刺さった。


 やはり刺突攻撃は使える。力で勝てない団長と剣を合わせても押し負けるのは分かりきっている。ならば、と考えていたのが刺突攻撃だ。斬撃は攻撃の軌道が線状なのに対し、刺突は攻撃が点で飛んでくる。その分回避しやすいが、剣で捌きにくい攻撃は団長に対し有効と判断してのことだ。


 それもゴッズと併用すれば、ほぼ確実に当てることができる上、体重をしっかりと乗せればこのように鎧を貫くこともできる。


 今の一撃は、流石に団長の筋を断っただろう。左腕を潰した。


 しかし、先ほどの刺突を受けた時と同じように、団長はさも当然とばかりに残った右腕で剣を突き出してきた。


「カーチス!!」


『——移れ』


 攻撃の合図を叫びながら強く念じた。


『燃えろ』


 俺の体は、団長が突き出した剣の奥に一瞬で転移し、その俺の頭上を掠めるように燃える鉄球が通り過ぎた。


 今回もカーチスの一投は狙い違わず団長の胸に着弾した。団長の鎧は鉄球の着弾点を中心にたちまちに燃え上がったが——。


「温いわ!!」


 団長は止まらない。燃えるような男から文字通り燃える男に転身した団長は、さも当然とばかりに剣を右肩に担ぎ上げて前進してきた。


「余計強そうになったじゃんかよっ」


 本当に泣きそうな気分で俺も剣を構え直し、受け構えに入る。


 剣の柄を右手だけで握り、左手を剣の腹に添える。次の瞬間、団長が振りかぶる剣が頭上に落ちてきた。


 がつんという重い音と、足の先まで響く衝撃が俺を襲った。


「カーチスっ!!」


「やばいやばい今行く」


 またもや地面に押し込まる形の鍔迫り合いになったが、絡み合ったこの姿勢ではカーチスの援護は期待できそうもなかった。


 クラッドはオリヴィエのヒールを受けたはずだが、高度な回復術でも戦意まではどうにもならない。


 それに、変なところで律儀な彼の事だ。一度戦闘不能にされたのだから、もう戦闘の資格は自分にはないと考えているかもしれない。どちらにせよ、クラッドにも期待できない。


 それにしても、重い。熱い。猛烈に重くて熱い。剣に持ち替えたカーチスが来るまで持ちこたえられそうにない。


 ゴッズがあれば逃れられるが、今さっき使ったばかりなので、再使用まではまだ時間が必要だ。


「移れえぇぇぇ!!!!」


「ふん!!」


 完全に詰みだが認めるわけにはいかない。必死で念じた。


 具足がずるずると土を滑り、団長と合わせた俺の剣が悲鳴をあげる。転移は発動しない。やがてそれは、真新しい剣の腹にひびを生み、亀裂になり、そして——砕けた。


 時間が引き伸ばされたような奇妙な感覚の中で、俺は自分の左肩に落ちる団長の剣を見つめた。


 やがて、どこか遠くで————。



——鎧が潰れ。



——肉が裂け。



——骨が砕ける音がした。

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