第3話学園後半

 学園生活二日目。

 

 カケルは前にいた世界と同じように目を覚まし、顔を洗い、ご飯を食べ、制服に着替えるという一般的な行動を行っていた。でも実際その一般的なことを何ヶ月もやっていなかったからか、少しぎこちなかった感はあった。

 

 家はエリン王女が用意してくれており、入学式が終わるとそこへ帰った。流石に王女様が住む所に住むってことにはならなかったが、そこそこ近いところに家を手配してくれたそうだ。

 中は案外綺麗で、もしかしたら前にいた世界の部屋より綺麗かと思ったほど綺麗だった。ベットやタンスといった家具は全て揃っており困ることは無かった。


 今日は各生徒が自分のクラスに初めて登校する日だ。

 クラスはあらかじめ手紙で知らされており、カケルはD組だった。

 どっかのクラスがズバ抜けて魔力を沢山持ってる人か居たりとかはなく、その反対も無く、平等に分けられているのだ。


 だが教室に入ってみると力とは関係なく、明らかに馬鹿にしている目線をこちらに向けているのだ。 まあこうなるだろうなと予想はできており、覚悟はしていたつもりなのだ。でもこうして実際されると、前にいた世界とほとんど同じ事をされて、帰りたい気持ちだった。


 自分の席に座り、周りを見ていると前の方から声がしたのだ。


 「あ、あのーあなたはソウマカケルさんですか?」


 「はい。そうですが?なにか?」


 どうやらこの世界では、カケルの名前を呼ぶときは片言になるらしい。珍しい名前でしかも読みにくいと誰でもそうなるであろう。


 カケルは悪印象を持たせるとまずいと思い、優しく対応した。ここで悪印象を持たれるとますます「前にいた世界と似てしまう」っと思ったからでもある。


 「良かったー!。もしかしたら怖い人なのかと思ったから。あ、私セレスっていうの宜しくね!」


 彼女は微笑みながら、こちらを見た。

 彼女は入学早々に学園のアイドルになったセレス・スティーナだ。一言で言えば美人より、可愛い系の方だ。の髪に、何色にも染まらない黒色の目の姿をしており、確かに可愛い。既に男子はセレスさんの争奪戦は始まっており、多くの男子が狙っている。実際、既に何人か告白したが尽く振られたそうだ。


 この人僕の事知らないのかな?もしかしたら馬鹿にしに来たんじゃと思ったカケルは少し嫌な顔をしながらセレスに聞いた。

 嫌な顔をした時周りの男子から殺意のこもった目線に晒されたが、スルーした。というかこんなシーン前にも遭ったような……。


 「ねぇセレスさん」

  

 「ん?どうしたの?」


 「僕の流れてる噂知ってる?まあ本当の事だけどさぁ」


 「うん。知ってるよ。でもそんな関係ないじゃん。ただ私はお友達になりたいだけだし」


 「そ、そうか。お友達か……」


 「え?なんか嫌だった?」

 

 「いや、別に嫌ではないよ。むしろ涙が出るほど嬉しいよ。ただ久しぶりだなって」


 そうカケルにも中学まではそれなりに友達はいたのだ。高校ではあんな感じだったが……。

 もしかしたら、ここでなら上手くやっていけるかもと思ったが、どうやら神は穏やかな学園生活は送らせてくれないそうだ。


 そうこうしていると、鐘が鳴った。

 

 「あ、もうすぐでホームルーム始まっちゃう。じゃまたね!」


 そういうと、セレスは自分の席に座った。カケルがセレスの方を見ると、視線に気づいてニコニコと手を振ってくるが、その行動のたびに周りの男子から嫉妬や殺意にこもった目線が体に突き刺さる。

 教師が入ってくる時には生徒は皆座っていた。

 

 ホームルームは教師の自己紹介からはじまり、生徒の自己紹介で終わった。


 一時間目は学園説明、行事説明だ。

 主に説明をしていたのが二年生とのペアの事だ。一年生には一年間全員二年生の弟子に付かなければならないのだ。誰が誰に付くかは二年生が、一年生を指名するルールとなってる。二年学年一位が、一年学年一位を指名する感じで同じ順位どうしがペアになるのが、一般的なのである。


 だが何故かカケルは二年学年七位の先輩と最下位の先輩二人の弟子に付くことのなった。

 それは二時間目の出来事だった…………。


 二時間目。一、二年生が師匠、弟子のペアを作るために多目的ホールに集まっている。

 流石に、一、二年が一カ所に集まると学園の生徒の多さがよく分かる。ぱっと見た感じ、三分の二ぐらいだろうか?。そのぐらい席が埋まっている。ステージから見て左側がが二年生。右側が一年生となっている。


 席順は前から一位、二位と並んでおり、最下位のカケルはもちろん一番後ろの席だ。これは二年生も同じそうだ。


 すると、前のステージに教師が立ち、進行を始めた。


 「えー。今からペア決めを始めます」


 「「「イェェェェェィ!!!!!」」」


 生徒達は非常に盛り上がっており、それは、まるでパーティ状態だ。

 一、二年生からしたら一つの一大イベントだろう。そんなことを知らないカケルは、盛り上がりに付いて行けず、「え?何々?。なんでこんなに騒ぐの?。」状態だ。


 「えー。一年生はそのままで。二年生が一年生の所に行ってペアを組んでください」


 教師の言葉がトリガーだった。

 二年生はその言葉と同時に勢いよく一年生の席に向かった。


 幸い一年と、二年の生徒の人数は同じらしい。前回のペア決めは一年が余って一部が、三人組となって大変だったと聞いた。


 やはり、上位の人はすぐにペアが決まり、雑談を周りに人としているようだ。

 すると、カケルの前に一人の女性が前に立った。


 「あ、あのー。もしかして最下位の人ですか?。私二年のアイと言います」


 最下位と呼ばれるのは気にくわないが、先輩だからそこら辺は我慢した。


 「あ、はい。僕は相馬カケルです。宜しくお願いします。アイ先輩?」

 

 「あはは。アイでいいよ。同じ最下位なんだし(苦笑)」


 彼女の口調を聞いてると、彼女も色々と苦労している様子だった。

 お互いの軽い自己紹介が終える頃。前の席で一人の生徒の一年生が頗る激怒していた。


 「おい!?。なんで俺とペアを組まねぇんだよぉぉ!」


 叫んだ生徒は、ヴォルルフ・デォーイ。学年では七位と上位の方にいる生徒だ。そこそこの知名度を誇る貴族らしい。てか貴族多いな。

 話を聞いていると、家の関係なんちゃらかんちゃらとプンプンしながら言っている。

 それの対して二年生の先輩は冷淡に、お家なんて今は関係ない。例え同じ順位だとしても、ペアを組む権限は私にあるの。貴方とは全く組む気が無いのでと言い放った。先輩はその後「私は組みたい人がいるので」っと付け加え去っていった。


 皆、先輩が七位の人を蹴ってまで組みたい人とは誰なのか?と気になっており目で追っている。

 カケルも目で追っていると、ある人の前で止まった。


 「あなたが、ソウマカケルね。私はあなたと組みたいんだけど良いかな?」


 そう足を止めたのはカケルの前だった。

 あ、あれ?。この人どっかで見たような……。


 「会うのはこれで二度目かな?。私はミア・イリネーレと言います」


 「あ、ああー、あの時の。朝はすみませんでした。ですが、僕には既にペアになる先輩がいるんですが……」


 「それなら大丈夫。弟子が二人付くのが良いのなら、反対に師匠が二人もアリでしょ。まあ。あなたと彼女の許可がいるけどね。」


 「僕は全く構いませんが。アイせんぱ――アイさんはどうしますか?」


 「私も良いよ。自分にも良い経験になりそうだし」


 「じゃあ決定ね」


 まあこういうのもアリらしい。すると、なんでこんな雑魚な奴に付くんだ?と周りは疑問というより、怒りがこみ上げて来ている。その中に、一番憤怒してるのが、ヴォルルフだ。


 「おい!!なんでそんな奴と組むんだ。そんな雑魚より俺の方が強いのに何でだ!?理由を言ってみろよ」


 「理由ねー。そうだね。率直に言えば、惚れたかな?あなたみたいなギスギスしていなく、彼のような優しい所に惹かれた。それに最弱からどこまで這い上がっていくかこの目で見てみたいの。ここまで言えば満足かな?」


 え、ええぇー!!僕にほ、惚れただってぇー!?ま、まあ~からかってるんだよね。うんきっとそうだ。きっと……。


 「ま、まあ良い。後々俺を選ばなかった事を後悔させてやる!粋がっているのも今のうちだぞ!」


 これって、宣戦布告?なのかな。まあこんな僕を敵に回しても意味無いけどね。弱いから自分が。


 「フンッ。きっと彼はこの学園一強くなるわ。きっとね」


 え?あれ?僕この人に力のこと言ったけ?。てことはどこで知ったのだろう。

 まあ、こんな事があって今現在昼休みとなる。


 「ごめんなさい。厄介事に巻き込んでしまって」


 「いえいえ。でも驚きました。僕みたいな弱い人に付いてくれるなんて。それよりあの理由って冗談ですよね?」


 「いや、あれは冗談ではないよ。惚れたのも事実だし、あなたをこの学園一にしてみたいのも気持ちは本物だよ」


 「で、でも、私も驚きました。まさかミア様と一緒になれるなんて」


 とアイさんは言った。

 どうやら、ミア先輩は有名な貴族なんだそうだ。だから貴族のヴォルルフが突っかかってきたのも頷ける。


 「いえいえ。でもアイさんも良かったんですか?。私なんかと一緒になっても」


 「そんな。私をこの機会に色々と学びたいので、本当に感無量です」


 アイさんもこの機会に学びたいらしい。そりゃそうだ。なんせミア先輩は二年生の中で七位であり、下の順位の人の憧れとなる人物だからだ。アイさんもこの機会を逃すと、最下位から抜け出せない。と思ったのだろう。


 「そう言ってもらえると嬉しいな。あ!もうすぐで昼休みが終わってしまう。ではまた明日」


 そう言いながら、ミア先輩は手を振りながら去っていた。当然アイさんもだ。

 今更だが、ヴォルルフは一位同士のペアに入れて貰うことにしたらしい。まあ勇者のペアだ。ペアに入ったとたんに、「勇者のペアだぞ!俺は!!」と普段の二倍ぐらい威張っていたが、周りに相手されなくシュンとしてたことがクラスであったことは内緒だ。


 昼休み後は闘技場へ行き、武器を扱う訓練をして今日の授業が全て終わる。最後の武器訓練は毎日やるそうで、体力が持つか不安になったカケルは「このままじゃまずい。」と思い毎朝トレーニングをするはめになったのであった。


 帰りのホームルームが終えると、カケルは学園から素早く退散していった。

 退散した理由は面倒ごとが嫌だったからである。一番フリーな時間になると二時間目の出来事を聞きに各教室からカケルの教室に押し掛けて来るのがとっても嫌なのだ。それに、人混みを好まないカケルにとっては地獄の時間となるため、一目散に逃げたのだ。


 これは、闘技場に行くまでに起こった実体験から得た対策法だ。


 家に帰ると、中にはメイドが居り、カケルのお世話係と聞いた。名前はミーニァだったかな?この世界では亜人のグループに入る。その中の獣耳が付いている分野に分けられる。


 「お風呂、夕食も全て準備が終えているので私は失礼します」


 あんまり喋った事がないから、今度ゆっくりお話でもしてみようかな。


 「あ、有難うございます」


 ミーニァさんは軽くお辞儀をすると、カケルの家から出ていった。

 その後のカケルの行動は速かった。食事を済ませるとお風呂に入り、準備されてた寝間着っぽいものに着替えるとベットに飛び込み就寝した。


  一方その頃――。

  

 「なんなんだよ、あいつら!調子乗りすぎだろ」


 手に持っていた鞄を地面に叩きつけた。よっぽど怒っている様子だ。


 「まあ落ち着け。俺達が他のものに負けるわけが無い。なあ?ゼクス先輩?」

 

 彼はそう言うと、近くに在ったふわふわのソファに腰を下ろした。


 「フッ。当たり前だ。負けるわけがないだろ。俺達は最強だぞ」


 喋ってるのは、ヴォルルフ、ベータ、ゼクス三人組でベータの屋敷に来ていた。ベータは一年生一位で、この学園一人しかいない勇者クラスの生徒で一応貴族らしい。ゼクスは二年生一位の生徒で一年から一位の座は誰にも譲らない程の腕がある。元々は一位ペアだったが、ヴォルルフが入ったため、三人ペアを組んでいる。周りからは学園最強のペアとまで言われている程強いのだ。

 

 「どうせ、闘技大会で力の差を示せば良いのだ。あの雑魚は腰を抜かすだろう。フハハッ」


 「そうですね。フハハッ」


 「「「フハハハハハッ」」」


 三人は同じように高笑った。

 

 闘技大会とは、一、二年生合同の大会だ。二対二のペアで参加する大会である。毎年開催されており、一年生にとっては初めての学園行事となる。

 この大会にはエリン王女やユグシア騎士団団長やその他の団長がご覧になるため、重要な行事であり、優勝したペアには王女様から小さな勲章が贈られる。


 騎士団団長が来る理由は、良い生徒を一年の時に目を付けておき、騎士団に誘うためだ。

 生徒は大会に向けていつもより訓練に励んでいるため、授業後もペアで自主練を殆どの生徒が取り込んでいる。


「あいつにトラウマを植え付ければ、活きも無くなるだろう。あぁ~楽しみだ」


 「「「グハハハハハッ!!」」」


 カケル達が気が付かない内に密かに魔手が迫っていた事は、三人以外誰も知らないのであった...。

 

 闘技大会まで後四日。

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