第4話 さあ、冒険の始まりだ?

 そのあとはなにげに雑談が始まった。


 三輪さんは、ここの部屋がそんなに暑くないのに、顔を真っ赤にしている。そしてやたらと俺の情報を聞きたがっていた。

 親はなにしてるだの、兄弟はいるかとか根堀り葉掘り。青柳さんもそれに便乗して、三輪さんの個人情報を色々と聞いてたし。


 なので、俺もしかたなく、2人にいろいろと質問したので、いらないと思われる個人情報を入手してしまった。

 ちなみに、三輪さんは両親とも共働き。

 6つ上のおねえさんが居て、おねえさんは都会で仕事をしているとのこと。両親は家の近くの工場で働いている作業員だそうだ。

 青柳さんは、両親ともここの役場に勤務しているとのこと。兄弟はいなくて、一人っ子で昔から厳しく勉強ばかりさせられていたらしい。都会有名大学に行ったものの、俺と同じように都会に馴染めずに田舎に帰ってきたらしい。その点は少し親近感が湧く。が、どうでもいい嫁の話を長々とするところは、やっぱり友達に似ている。


「ど、同期なので、あ、あの、あだ名とかそういうもので、よ、呼び合いませんか?」


 青柳さんが提案してきた。さん付けよりも仲間っぽいし、いいんじゃないかな?と俺も同意する。三輪さんもいいですね、とノッてきたので、3人であだ名で呼び合うこととなった。


 じゃんけんで、俺→青柳→三輪→俺、の順にあだ名を考えることになり、俺は青柳さんのことを、直感で真っ先に浮かんだのは白いヲタ豚、という失礼極まりないものだったので、理論的に考えることにしたが、まったく思い浮かばなかったので、タローというかなり安直なあだ名にしてみた。名字から、ブルーとか柳とかそういうのが似合わなかったんだもん!と幼女風に心の中で言い訳をする。


 タローは三輪さんのことをあかねんと付けた。まあ定番のヲタ系あだ名だな。あかねん(ハート)と呼ぶところはキモいけど。


 三輪さんは、


「すずくん…、すずりん…、すずちゃん…、うーん」


 と散々悩んでいたようだが、すずくんに決めたようだ。まあ、すずちゃんとかすずりんとかそれは女子っぽいあだ名だろ。と思ったけど、一番マシだったので、胸をなでおろす俺。


 一段落して、部屋の時計を見る。用意があるから、と新人3人を残して全員出てしまってから、すでに一時間は経過している。仕事なのにいい加減放っておきすぎだろ、と思い、3人で総務課までいくことにした。



 廊下に出ると、30代後半の職員がいたので総務はどこですか?と聞いてみる。


「ようこそ! 田舎村にある田舎城へ!」


 とだけしか繰り返さない。こちらが何を言ってもそれしか言わないので、くすぐったりつねったりしてみたけど、涙目になりながらもその単語しか言わない。しかもなんだよ田舎城って。RPGじゃあるまいし。


 と、となりのタローを見ると、なにかキラキラした目になっている。


「こ、これが異世界かぁ!!」


 とテンション高く、廊下に響き渡る大声でタローは言う。先程ようこそと言っていた職員が、その声に驚いてビクッと身体を震わせる。いやそもそもここは田舎村で、異世界じゃないし。そう思って隣のあかねんを見る。


 ……あかん、あかねんも恍惚とした表情になっている。どうやら小説なんかでタローと同じような異世界物語を読んで楽しんでいたタイプだ。



 そんな2人とようこそ職員を見て、俺はなんだか絶望的な気分になった。

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