不達の手紙

 名も知れぬ君へ。


 君のお姉さんから脅し混じりの発注が来たよ。もちろん拒否したことも付け加えておく。

 いずれ弟の君がQへ来ることも、その目的も聞いているが、誰にもできないことを、なぜ君にはできると信じられるのか。彼女の頭がかつて正常な時期もあったのか、弟の君になら訊けばわかるのだろうか?

 彼女から何とか君の宛先を聞き出したので、間に合うことを祈りつつ、残念ながら君の出立もお姉さんへの助力も無駄になると伝えるべく、手紙を送ることにした。

 君はまだ若いのだろう。いつか人生の黄金時代と呼ぶであろう時期に、あんな店……失礼、私などに関わって過ごしてしまうことを恐れてほしい。

 切符など、誰かにあげてしまうといい。失くしてしまうといい。何なら、私が買い取っても構わない。

 君には他の未来もあるのだから。

 私からの精一杯の忠告を、無駄にしないでほしい。


 君の見知らぬ、Qの街の鉱夫より。


 追伸

 私は採掘しない。Qでは、石が鉱夫を採掘する。

 しかし、彼らは私を見限ったようだ。それを、なぜ君たちは理解しないのか?

 私はしばらく眠ることにする。新しい鉱夫を見つけてくれ。

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