夜の鉱夫はカフェにいる

家々

姉からの手紙

 親愛なる弟へ。


 まずは卒業おめでとう。あの状況から卒業まで漕ぎつけるとは、まったくおまえには驚かされる。

 さて、まだ働き口が見つかっていないと両親から聞いているが、手が空いているのならしばらく私の店で働くといい。列車の切符と地図を同封する。

 空き部屋を家具付きで貸すから、安心して旅行鞄ひとつで来い。久しぶりの再会を楽しみにしている。


 おまえの体重くらいの愛をこめて、姉より。


 追伸

 駅に着いたらひとつ頼まれて欲しい。

 ここQの街はいくつかの希少な宝石の産地だ。私の店で扱っているが、万年鉱夫不足でどれも入手が厳しくなる一方、Qの宝石の原石は、専門で熟練の、Q生まれの鉱夫にしか採掘できない難点がある。

 知り合いで贔屓の鉱夫がいるのだが、最近めっきり採掘しなくなってしまった。この鉱夫が採掘する宝石〈夜〉は私の店の主役といっていい。在庫が底を尽く前にひとつでもいいから入荷したい。

 〈夜〉の鉱夫は、たいていカフェ〈鍛冶場の下〉で寝ている。Q中央駅近くだ。店までの道中で叩き起こしてきてくれ。注文書を同封するので、その場で開封させ、受注させるように。興味があれば採掘に同行しても構わない。

 初業務としてよろしく頼む。

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