第3話 村野の罠

 「くそ、やられた……」


 次の日、喫茶店『サルーン』で待つ私は思わずそう呟いた。

 時計はもうすでに17時を指していた。一向に村野が現れる気配はない。


 ——結局あの野郎、俺をからかっていやがったんだな、最初から安田の「秘密」なんか知らなかったに違いない。まんまとあいつに弄ばれた——


 込み上げる怒りと同時に、湧き上がる残念な気持ちも否定出来なかった。

 安田の言っていた「秘密」。

 それをつかむための手がかりは、するりと私の手をすりぬけてしまったのだ。かすかに抱いていた希望、それが打ち砕かれたことは事実だった。


 しかし次の日、私は真実を知ることになる。

 営業二課に務めるとある友人から、妙な話を耳にしたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る