1話 ある男の日常

 日課の朝のランニング、私はまだ寒い中、白い息を吐きながら土手を川沿いに走っていた。途中ランニング仲間のおじさんをすれ違い、互いに挨拶を交わす


「よっ!おはよう」


「おはようございます」


 私にはある個性がある。いわゆるバーコード頭というやつだ


「はぁ…はぁ、少し休むか」


 朝のランニングの途中で少し寄り道をしようと思い、私はコンビニに向かった、店に入る前に休もうとコンビニの前で座っていると


「キィ…」


 コンビニの前に運送会社の車が止まる、商品の納品に来たのだろう


「おはようございまーす」


「おはようございます」


 運送業者とコンビニ店員が挨拶をしている、その光景をなんとなく見ていた私を何者かが持ち上げようとした


「くっ…重い!この商品の中身なんだよ、鉛でも詰まってるのか?」


 どうやら私のバーコードを見て納品する商品と勘違いしているようだ


「あの・・・私は品物じゃないです・・・」


「バーコードがしゃべった!?」


 運送業者の人が驚いて手を離し、しりもちをついてしまった


「あの、大丈夫ですか?」


 私は心配になり業者の人に声をかけた、そうしてやっと私を人間として認識したようだ


「はっ!?すみませんっ!!俺、とんでもなく失礼な事を!」


「いえいえ、いつもの事ですから」


 こんなことをいちいち気にしていたらバーコード頭なんてやっていられない。必死に謝る業者の人を私はどうにかなだめた


「あ、そういえば牛乳切らしてたな」


 もう息は整ったので、私はコンビニで買い物をすることにした


「いらっしゃいませー」


「えーと、牛乳と・・・パンも買って行こう」


 適当に選んだ菓子パンと牛乳をレジへ持って行く


「108円…250円…」


 機械で商品のバーコードを淡々と読み取っていくコンビニ店員、そして当然の様に・・・


「ピッ」

 

 私の頭にレーザー光線を浴びせバーコードを読み取った


「2323円…合計2681円になります」


「はい」


 私は頭の代金も含めてちゃんと払った、いつもの事なのだが店員にツッコんでしまうと負け無様な気がするのだ。これはこの店に限った話ではない


「ありがとうございましたー」


 私はなのも言わず店を出て家に帰ることにした。そしてふと気になった


「そういえば、私のバーコードを読み取った後レシートにはなんて書いてあるんだろう・・・」


 私はレシートを見てしまった


「バーコード・ヘア、頭質ゼロ、2323円・・・・・やかましいわ」

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