第15話 大地を蹴り上げて、明日に向かって

「…飛べっ!」


大地を蹴り上げた


ぶわっと、宙に体が放り出された。


浮かびかがって、最高到達点で1秒くらい静止した。


そのあとのことは言うまでもないだろう。


地球の重力は偉大だった、とだけ言っておく。


4メートルくらいの高さから地面にたたきつけられた。


なんとか衝撃を分散しようと地面に接した瞬間にゴロゴロと体を廻した。


おかげで全身打撲である。ナイス受け身。


「っってー・・・」


〈おい大丈夫かクー!〉

フレアが走って向かってくる。

【・・・立てるか?】

それよりも先にローズ姫がたどり着いて、俺に手を差し伸べた。

「・・・ありがとうございます。」

お姫様の手を取り、引っ張り上げて起こしてもらう。

〈あっこら馬鹿!クー!大勢の見ている前で姫様にそんなことさせるな!時代が時代なら刑罰者だぞ。〉

【構わないよフレア。この者は本当に愉快だな。】

〈すいません姫…〉


フレアは振り返り、全体に聞こえるように言い放った。

〈これにて実技試験を終了する!審議ののち、後日国王の名の元、研究者の認可を行う!ではこれにて解散!〉


ざわつきながら見物人たちが散り散りに去っていく。

「あれは受かったな」とか「フレア教士お墨付きか」とか噂話を繰り広げながら。


フレアがクーに向かって言う。

〈おい、無茶したなぁクー。メディが中にいるから、見てもらってきな。〉

「はい。…いてて。」

〈じゃあ私たちはこのあと会議だから。先に行ってるよ。〉

「いってらっしゃい。」

手を振ってフレアと姫様を見送った。


・・・とてとてとお姫様が小走りに歩いて戻ってきた。

【…あのっ】

僕と彼女にしか聞こえない声で、そっと聞かれた。

「なんでしょうか、お姫様。」

くいくいっと人差し指を曲げて耳を貸せと合図される。

【今度、雨の降らし方教えてくださいねっ】

優しい声で耳打ちされた。


彼女はそれだけ言うととてとてと走っていき、フレアに合流して城の中に消えていった。


☆ ☆ ☆


[あぁ、そういうところあるんだよシンデレラ嬢は。]

メディにさっきの事を話したら、そんな事を言われた。

「って言いますと?」

[お姫様に認められたんだよ。実力を。]

「それでシャーリーみたいに素直でかわいい子になりますかねぇ…いてて。」

静かに本を読んでいたシャーリーが反応した。

{クーにぃなぁに?}

「いやいや、シャーリーは良い子だなって話をしてたんだよ。」

{えへへー、ありがとう!}

ホント、これくらい素直だったらいいのにな。

あの火事の後だ。俺もフレアも試験で出かけるから、家に1人でシャーリーを置いとくわけにはいかなかった。

なので今朝から一緒に城に連れてきて、メディにシャーリーの面倒を見てもらっていた。

メディが俺の擦り傷に薬を塗りながら言った。

[まぁ、あの子はお姫様だからねぇ。公じゃああふるまってるけど、2人きりになると普通の女の子に戻れるのよ。]

「いってっ、そこ染みるっ…ってメディさんもローズ姫にそういうこと言われた経験あるんですか?」

[まぁね。あの子君と年近いから、多分最初は嫌煙してたんだと思うよ?同じ学者だし。]

ガーゼを傷口に当ててテープで貼られる。

「へぇ…って、あのお姫様研究者だったんですか!?」

[そうそう。しかも君と同業者。物理地学の申し子よ。]

あー・・・それは嫌われてもしょうがない気がする・・・

仲間というよりは商売敵に会ったようなものだろう。特に地学は。

[あとね、フレアが言ってたんだけど、多分あの子もこの世界の人間じゃないわよ。]

「ええっ!?」

めちゃくちゃ驚いた。

[嘘よ。]

「ぇー」

どっと力が抜けた。

[・・・はい!もう大丈夫よ。]

「お世話になりました。」

けがに関してはメディには本当に頭が上がらないな。

{メディさん治療終わったー?}

シャーリーが待ってましたと話しかける。

「終わったよシャーリー。」

{わーい!お兄ちゃんあそぼっ!}

シャーリーが飛び込んでくる。

素直な女の子はかわいいなぁ。

[ふふっ、クーはモテモテねっ]

メディが笑いながら言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る