第4話 お洋服を買う 1
幼馴染みのプルムに電話をするのは高校の時以来かな。
確か、高校のクラスメイト達との卒業旅行の連絡が最後だったか?
その後、あいつも俺と同じ高等魔法専門大学校に入り、同じクラスなので電話する理由が無かったのだが。
小さい頃は郊外の俺の実家とあいつの家が近く、よく遊んだもんだが、中学に入るとそれぞれの友達と遊ぶようになった。
高校を出て俺が王都で独り暮しを始めてからは、ここ数年は学校で話すだけ。
だから召喚獣の洋服を買うのに付き添え、なんて突然に都合のいいお願いするのが、ちょっと気が引ける。
てか、出てくれるかな……。
3回、4回とコールが続く。
『……もしもし、何よ?』
出た。
不機嫌そうに素っ気ない声だが、こいつはいつもこんなんだ。
『あ、カイルだけど。休みの日に悪い、ちょっと頼みがあるんだ……』
『な、なによ急に改まって?!とりあえず聞くだけ聞いてあげるわよ』
『そか!良かった!……俺とさ、中心街に一緒に行って欲しいんだ』
『えっ!一緒に中心街に、って……』
『あ、いや、何となく遊びに行く感じに気楽に、さ!ほんと、一緒に居てくれるだけでいいから!』
エルフェリア中心街ともなれば朝の買い物どころの騒ぎじゃ済まない。女の子で召喚師のプルムが居てくれるだけでも心強い。
『いっ、一緒に居てくれるだけでいい、って、ええええ?!』
なんか知らんがプルムが慌ててる。
『い、い、いきなりそんな事言われてもっ……!』
確かに、なんといってもプルムは大召喚師家系のお嬢様だから、休日はいろいろと忙しいはずだ。
『そうだよな……。お前はお嬢様だしな……。予定があったなら諦めるよ……』
ああ、妥協してライリーを連れてくしかないのか……。リンネをあいつに会わせたくないんだよな。
何と言ってもあいつは真性ロリコンだから、余計に騒ぎが大きくなりそう……。
首輪で繋いだ美女児とロリコン男連れて下着売り場に、って今日は絶対無事に帰ってこれないよな。
『ちょっ!よ、予定なんてまだないわよっ!それに、そんな簡単に諦められる程度なの?!』
『なんだ、予定はないのか!だったら絶対、お前じゃなきゃダメなんだ!』
『!!!そ、そんなに私がいいなら、その、つ、付き合ってあげても……、いいわよ……』
『そうか~~!ありがとう、プルム!ここで妥協してたら俺、後で後悔してたと思うよ……』
『うん……、私、絶対、後悔させないから……。よろしくね、カイル!』
『おう、じゃあ午後1時にエルフェリア中央駅の東口で待ってるから!』
『うん!また、後でね!』
……ふぅ~。
プルムがオッケーしてくれてほんとに助かったぜ。
と、安堵のため息をもらしてる俺に、
「えいやぁっっっ――!」
ポカッ!
「あ痛!」
軽い模造ソードの打撃が命中。
さっきまで読んでた絵本『駆け出し剣士の大冒険』の真似をして、リンネがおもちゃの剣を振り回している。
「こら、リンネ!人を攻撃したダメだろ!」
「だたな、わりゅいまのもめ~~」
と、つなない口調で勇ましく叫ぶと、またポカリ。
絵本を読んで、剣の使い方も覚えるとは、さすが俺の召喚獣!なんて賢い子だ!
どんどん成長していくリンネを見てると、何だか嬉しくなってくる。
「ぐおっー!わたしはまおうだ~~!悪い子は食べてしまうぞ~~!」
「きゃぁ~~~!!」
ピョンピョンと跳ねながら部屋中を逃げるリンネを追いかけ回し、後ろから捕まえて、身体中をくすぐってやる。
「きゃはははははは!」
リンネと二人で転げ回ってひとしきり笑いあった。
子供の成長に嬉しくなって、ふざけて一緒になって遊んでるって。
……これって完全に父子の交流だよなあ。こいつは術師として支配し、使役する召喚獣なのに……。
通常召喚に召喚される召喚獣は一時的に他の世界から呼び寄せて使役し、用事が済めば帰って行く。
次に同じ種を召喚しても、前の個体と同じとは限らない。
しかし、双霊召喚獣は1から育て、術師の理想どうりに育成できる。
しかも術師の魂と結び付いてるから、返喚することも出来ない。
いつも一緒にいるから召喚獣との絆は深まるのは解るけど、他の連中は自分の双霊召喚獣とどんなふうに付き合ってるんだろう?
ガルムやゴーレム、ゴーストとこんな風にふざけあって遊んでるんだろうか……?
確かプルムの双霊召喚獣はクリスタルゴーレムだったはずだから、召喚獣育成についても聞いてみよう。
俺は出掛ける準備のため、リンネが散らかした部屋を片付ける。
あーあ、畳んだ洗濯物がめちゃくちゃだよ。
壁にはクレヨンの落書き、お菓子の食べこぼしに……。
俺の大切なフィギュアの腕がもげてるっ!
「ほら、リンネ!おでかけするから、おもちゃを仕舞いなさい」
「ううー!おで~か~け??」
まだ言葉の意味が解らないのか、リンネが小首を傾げて無邪気な表情で見上げてくる。
すごく可愛いけど、なんか野暮ったい。上下がジャージ姿というのもあるが、ノーメイクで髪もボサボサ。
このまま国一番のオシャレ街に連れていくのは可哀想なので、洗濯していた一張羅、水玉ブラウスにヒラヒラスカートに着替えさせることにした。
洗ったブラウスとスカートが、なんかしわしわだ……。
アイロンかけてみたら、布が余計ビヨビヨになった……。
とりあえず着せてみようと、ジャージのチャックを下ろす。
ああ!……素肌ジャージだったんだ。
なるべく意識しないように全裸にすると、ブラジャーをつけてやる。
あれ、最初みたときより、リンネの胸が大きくなってる。
横からじっくり見てみると、細い胴廻りに綺麗なお椀型の膨らみ。
うーん、微美乳だ。
………………………………………………。
っと、いかん!見入ってしまった!
急いでブラジャーを着けてやり、つぎはパンティ。
パンティを広げて脚の下に持っていくと、リンネは自分で片足をあげる。
自分で着替えられるようになるのも、もう少しだな。
視線を上げないようにパンティを掃かせ、ブラウスを羽織らせ、腕を通してやる。
「ほら、ボタンっ!やってごらん」
「んん~!……あうう」
ぎこちないながらもリンネはボタンをとめる事ができた。
ブラウスを着せたらスカートを履かせて、位置を整えて、次に靴下。
服が終わったらボサボサの髪の毛をどうにかしないとな。
ヒラヒラの服に合うのはやっぱツインテールだろ!
ってことで、髪留めゴムで綺麗な金髪をツインテールに結んでやる。
「こら、動くんじゃない!じっとしてなさい」
苦労して結んでから眺めると、結んだ位置がちぐはぐ。
位置を合わせて、どうにかツインテール完成!
女の子に服を着せて髪を結ぶのって、意外と大変……。
世のお母さん達の苦労がちょっと解った。
でもまあ、こんなものだろ。
最後に縛術首輪と鎖で結んで、お出かけ準備完了だ。
こうして俺はリンネと連れ立って家を出る。
歩くときはリンネの隣に並んで、縛術チェーンを隠すように手を繋いでおけば目立たないことをこれまでの苦労で学んだ。
列車に乗り、エルフェリア中心街に向かう。
「ガタンごとん!ポーー!ポーー!」
と、初めての列車に大騒ぎするリンネと一緒にエルフェリア中央駅に降り立った。
駅前は多くの人が行き交い、その中にはちらほらと召喚獣を連れた召喚師の姿も見える。
お、あれはガーゴイル種か!
あっちはドリアド種!大学対抗の模擬戦でうちのチームをボコボコしたのがあいつの毒と麻痺攻撃だったよな……。
興奮ぎみにキョロキョロするリンネを連れ、俺はプルムとの待ち合わせ場所、駅前のケルベロス像に向かった――。
これまでの召喚獣の成長値
腕力 3 器用 5 俊敏 5 魅力 12 魔力 2 知力 15 社会性 18
本日までに通報された回数 3回
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