第16話 残暑

 カレンダーではもう九月。しかし、残暑がとにかく厳しい。いつから、わたしの住む地球はこうなってしまったのだろうかと、思ってしまうくらいの日差しだった。

 会社の同僚と、お昼休みの会話で、この残暑をいかにして乗り切るかという話題をしていたら、いつの間にか参加者が七人くらいに増えていた。

 それくらい、暑いのだ。

 わたしは、まだ何の症状も感じてはいないのだが、同僚の中でも年齢が近く話しやすい子によれば、ちょっと遅い夏バテを患っているというのだ。よくよく、話を聞いてみると、食事のあとで必ず胃もたれが起きて、そのあとは酷いと吐き気に繋がるらしい。それから、土曜日に胃腸科へ行ってみたら、夏バテといわれたらしい。とりあえず、胃薬を処方するから様子を見てほしいと言われて、欠かさず服薬しているようだ。

 それなら、わたしの胃腸はまだ元気なようだ。胃もたれもなければ、吐き気もない。これから、そうなるかもしれないから、胃腸をいたわるのも大切なことだなと思う。

 その子にはお大事にしてねとみんなで声をかけあった。

 そうこうしていると、もう、午後のはじまりだった。

 午後はほぼ全員参加の定例会議で、会社にとっては大事らしい。らしいというのは、わたしは二回ほどしか参加経験がないからである。電話番にはこのようなメリットがあった。わたしは、会議というものがあまり好きになれず、みんなの前に立ち、しゃべるということがとにかく苦手だと思っている。だから、電話番というのも悪くないと思ってしまう。

 会議は一時間から、二時間で終わることがほとんどだった。先日の大きな仕事について、発表があり、先方が大変気に入ってくださり、引き続き仕事に取り組むことになったらしい。数社からの見積もりや、サンプルなどを受け取っての判断なので、わたしでもこれはすごいことだと分かる。みんなで拍手をして、盛り上がったところで、今日の会議は終わるらしい。ついたてで区切られてしまうから、わたしの机からは様子がいまいちつかめないが、喜ばしいことには変わりなかった。

 そして、退社してまずは整形外科による。その次に、スーパーに寄って、たらことオリーブオイル、バターなどを忘れないようにかごに入れる。もちろん、わたしの好物のサラダの材料もそろえた。これから、サラダのドレッシングは手作りのドレッシングにすることに、お昼休み中に決めたのだ。

 家について、お鍋に水を入れてお湯を沸かす。そのあいだに、パスタを半分に折って、お鍋のサイズに合わせた。それから、たらこを包丁を使ってほぐして、バターとオリーブオイルであえる。煮立ったお湯に、大量のお塩を入れる。パスタの茹で時間は七分。タイマーをセットして、今度はサラダを作る。メジャーカップに、醤油にみりん、すりごま、そしてごま油を少しだけ入れて混ぜてみる。味見をするけれど、なにか足りない。しばらく悩んで、お酢を足してみたら、なんとか整った味になった。 

 パスタの茹で上がりを知らせるタイマーの音に、驚いて、急いで火を止める。

 ザルに茹でこぼして、ボウルにパスタを入れる。あとは、よく混ぜれば、たらこのパスタと、和風サラダのできあがりだった。

 市販のドレッシングよりも、野菜が美味しく感じられるのは気のせいだろうか。やはり、余分な添加物がないから、美味しく感じるのだろうか。作れるときは、ドレッシングを手作りしてみるのも悪くないなと思った。

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