第7話 週末の楽しみ

 金曜日の仕事からの帰り道。わたしは、スーパーに寄っていた。今晩もサラダを食べることにする。不足しがちな野菜を補おうと、今日はカットレタスに、ピリッとした辛さが病み付きになるカイワレ大根。そして、苦手なトマトを一個買うことにする。それから、魚と肉ならば、今日は魚。それもサーモンが食べたいと思った。柵の刺身しか残っていなかったが、包丁を引きながらゆっくりと焦らずに数回に分けて切れば問題がないことをわたしは知っていた。

 材料がすべてそろい、レジを通過して袋詰めをする。左手にレジ袋を握った。

 いつもの手順で周囲を警戒しながら、自分の部屋に入る。豪華なサーモン入りのサラダを作り、ラップをかけて冷蔵庫にしまう。サラダを冷やしているあいだに、入浴をすませる。

オニオンとゴマのドレッシングをかけたサラダで軽い食事は終わった。

 今夜はテレビの変わりに、読みかけの小説を手に取る。しかし、一ページも読み進めることなく、メールの確認をすると翔さんからメールが届いていた。タイトルには何も記載されていなかったが、本文はお疲れさまからはじまっていた。

「お疲れさまです。

 この前は御苑に付きあってくれてありがとう。

 もし、りんさんにも行ってみたい場所があったら、教えてください」

 わたしが行きたい場所。なかなか考えても出てこない。しかし、メールを受信しているのは二時間ほど前になる。考えてみたが、分からなくて挙句の果てには図書館が浮かんだ。しかし、図書館は静かにしていなければならないし、あの雰囲気は慣れるまではけっこう気疲れする雰囲気だ。だがしかし、書店ならばどうだろうか。あそこならば良さそうだ。問題があるとすれば、翔さんが本を読む人かどうかということだ。ものは試しだ。メールをしてみよう。

「お疲れさまです。

 御苑はわたしも楽しかったので、お礼をいうのはわたしのほうです。

 行ってみたい場所ということですが、池袋にビルがまるごと書店になっている場所があるとこの前知りました。もし、翔さんが本に興味があるようでしたら、そこに行ってみたいです」

 送信。返信はすぐにやってきた。

「分かりました、そこにしましょう。

 池袋には行ったことがありますか? ふくろうの像があるので、りんさんに問題がなければ、明日はそこで待ち合わせをしましょう」

 わたしは、ふくろうの像があるというのは初耳だったが、池袋には行ったことがあったから、大丈夫だろうと思った。

「池袋には行ったことがありますが、ふくろうの像は知りませんでした。

 明日、案内図などを見ながら向かうので、そこで待ち合わせましょう。

 書店なので時間は午後からでもいいですか?」

 送信して、翔さんから新しくメールが届く。

「そうですね、午後からのほうがいいと思います。

 ふくろう像の前で午後一時にお会いしましょう。

 よろしくお願いします」

 すぐに、わたしも返信をする。

「はい、よろしくお願いします。

 楽しみにしていますね」

 いつの間にか二度目のお誘いが来ていて、それだけでも奇跡だと思う。そう考えるわたしは、もしかすると、ちょっとおかしかったりするのだろうか。

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