第2話 潮江天満宮へ

「わしはのう、おまんの身体が心配。

 それだけぜ。

 そりゃあ、男の子も欲しい。

 今やったら、わし好みの男に育て上げる自信もある。

 けんど、それもこれも、おまんの身体があってこそじゃ。

 どうぞ、たのむき、よう考えてみいや

 第一、男の子じゃ言う保証はないがぜよ」

 

「いいや、男じゃ。

あたしも何人も産んできちゅうき、ようわかる。

今度の子は、男じゃ。


あたしゃあ、普段、龍のことなんぞ考えたこともない。

それやのに、3日3晩続けて、龍の夢を見たがぜえ。

それもただの龍やないき。

ゆんべの龍は、金色でものすごい昇り龍じゃった

その前は、白色の龍じゃった、その前の晩は」


「わかった わかった それはもうなんべんも聞いたき

ようわかっちゅう。

それより、通り町のお高さんは、無理して産んで

結局、亡くなったらしい・・・

子供は助かったらしいけんど、不憫じゃあ」


「おまさんは、年齢を心配しゆうらしいけんど

あたしゃあ、他の人より若いし元気ぜえ。

自分の身体は、自分が1番知っちゅうき」


「そうは言うても、おまんも、四十が近い。

人間いつまでも若うない。 無理は禁物ぜよ」


鏡川沿いに東に歩き、天神橋を南に渡る。


郷士といえども風格十分、威風堂々の男ぶりの

長兵衛と、若く、しかも凛とした雰囲気を併せ持つ幸は

傍目には、申し分なき二人連れである。


・・潮江天満宮にお参りを兼ねて行ってみよう


長兵衛は、橋の上で腕組みをしながら

少しうつむき加減に歩を進めた。


大きな楠が二人を迎えてくれた。






 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る