日辻芽太の快適羊生活!

沢丸 和希

第一章


 よし、ここは一旦落ち着いて確認してみよう。


Q.俺は誰ですか?

A.日辻ひつじ芽太めいた、高校一年生です。チャームポイントは天然パーマです。


Q.さっきまで何をしていましたか?

A.授業を受けてました。正確には、先生の声を子守唄に寝てました。


Q.因みにどこの学校ですか。

A.地元の県立高校です。田んぼに囲まれたド田舎で、一番近いコンビニまで片道二十分以上掛かります。


Q.もう一度聞きます。俺は、さっきまで何をしていましたか?

A.自分のクラスで、窓際の机にへばり付きながら、寝てました。


 ……寝てた、筈だよなぁ。


 なのに、なんで俺は知らない庭で転がってるんだろう。


 そしてなんで、知らない姉ちゃんに剣を突き付けられてるんだろう。


 更になんで、剣に反射して映ってるのが、黒い羊の顔なんだろう。

 しかも俺が首を動かすと、同じ方向に動いてみせる。心なしか、頭だけじゃなく全身がモフモフしてる感じもするし。


『あれ?』


 って、言ったつもりだった。

 でも俺の口から出たのは、


「メェ?」


 の一言だけ。


 あ、俺、羊になってるわ。

 そう自覚したら、びっくりし過ぎて腰を抜かした。


 羊って腰を抜かせるんだなぁとか思いつつ、俺は剣に映った自分の顔をもう一度眺めた。


 取り敢えず、どこだ、ここ。

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