後輩と手紙とクッキーと

中学のクラスメイトと鍋パをしてから数週間が経った。相変わらず嫌いな教師にイライラし、親に対してもイライラし、しかしカッターの刃が錆びてしまったのと金欠でリスカの跡が増えることはなかった。

変わったことと言えば……

「優ちゃん先輩ー」

この間話した1年生の後輩や、その他の後輩などと話す様になったことぐらいだ。

「なに?」

あまり人と話したくなく普段人と話すことが少ないせいでにじみ出るめんどくさいオーラを気にせず話しかけられると話さないことを諦めの方が多くなる。

「クッキー焼いてきたんですけど食べます?」

そう言ってこの間話した後輩は袋に入ったクッキーを目の前に出してくる。

「んー、貰う、ありがと」

俺はそう言ってクッキーを受け取り袋からクッキーを1枚取り口に運ぶ。

「美味いな……」

「そう言えば優ちゃん先輩今度カラオケ行こ」

クッキーを食べていると後ろから別の後輩がそう言ってきた。

カラオケなんて基本的に1人で行くか、誰かに誘われた時に行くぐらいだ。

「まぁ、いいけど」|

「じゃぁ土曜日の朝からで」

「了解」

俺はそう言ってからクッキーをくれた後輩の元に向かった。

「クッキー美味しいよ、ありがと」

「良かったです」

俺がお礼を言うと後輩は笑ってそう言った。



















「ん?なんか入ってる」

家に帰ってからクッキーの残りを食べようとすると袋の中に1枚の紙が入ってることに気づいた。



『先輩へ、受験勉強頑張ってください。応援してます。クッキーの味はマズかったらすみません。それと先輩は十分にかっこいいですから自信を持ってくださいね

伊吹遥香いぶきはるか



「伊吹……遥香か」

手紙を読み終えると書いてあった名前を口に出していた。

「とりあえず今度眼科行くように言っておくか」

そう呟きながらクッキーを口に運んだ。

口元が微妙に緩んでいるのに気づいたがそれは気のせいだ、と自分に言い聞かせた。





手紙は無くさないように大切にしまった。

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