みんなで見届けたい、アンスイートニチアサ百合小説

1994年に制作された架空の女児向けアニメ『魔導聖騎士 スイート☆パラディン』の続編。

前作のクライマックス、世界を救う使命を帯びた戦士・スイートパラディンである少女ナナといづみが魔王ジョロキアを討ち、悲願を果たしたのは皆さんご存知の通り。

物語の始まりはそれから23年後。

工場パートタイマーとして荒んだ日々を暮らすかつてのスイートパラディン・ナナ(37歳)が復活した宿敵・キャロライナに魂を売り渡し、世界に牙を剥くと、新世代のスイートパラディンとして2人の少女が選ばれ、戦いに身を投じることに。
世界観もメインのキャラクター造形も、特に現スイートパラディンである甘寧、仁菜のやり取りはまさに女児アニメノリ。

一方、作中世界は登場人物にとても残酷です。
かつてのスイートパラディンは報われない人生を歩んで大人になり、現スイートパラディンの2人がどれだけ懸命に戦っても全ての人の命や人生は守りきれません。
(このレビューを書いている時点での)最新話ではあまりに大きな喪失が描かれました。

しかし、少女たちに残酷な運命を背負わせる露悪趣味だけの小説ではありません。救われる人救われない人選ばれる人選ばれない人、敵に味方、主役から脇役、モブまでそれぞれの人生がある/あったことにとても真摯です。
誰にも未来の幸福は保証されない世界で、彼らはどんな『Happy Ending』を迎えようというのか。
プリキュアシリーズ視聴者から見たこともない人まで、多くの読者の目に触れ、一緒にその結末を見届けて欲しくなる作品です。



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