第16話 亡くなられた方のご挨拶

 カクヨム異聞選集が開催されるようですね。


 応募要項によれば「実体験に基づくオリジナル作品のみ応募可能」。

 これは実体験を語ったもの限定なのか、実体験をベースにした創作なのかわかりかねますが、今回は私がお寺さんから聞いたお話をひとつ――。



「亡くなった方が、みずからご挨拶にくる」


 思わず、え? と聞き返したくなるお話です。


 お寺さんおっさんが言うには、


 突然、誰もいないのにピンポンが鳴ったり、電話が鳴って出ると切れていることがある。

 そういう時は、しばらくすると“誰それが亡くなったので枕経まくらぎょうをお願いします”と連絡があるらしく……。


 今では、そういう事があると、先に枕経の準備をして連絡があるのを待っているとか。



 お寺さんは、しみじみとおっしゃいました。

「あれはね。亡くなられた方が、自分でお願いに来てるんだよ」


 決して嘘を言っているようには見えません。

 不思議ですね。他の人が言うと信じられませんけど、お寺さんが言うと不思議と納得できてしまいます。


「怖くないんですか?」

とおうかがいすると、笑いながら、

「まったく怖くないですよ。檀家さんですし……。むしろ、ありがたいなぁって思っていますかね」

とおこたえになりました。


 幽霊と聞くと、私なら怖いですけど。多くの方の引導をされた、お寺さんならではの言葉でしょうか。


 科学が発達して、論理的な思考が当たり前になっている私たちにとって、幽霊という非科学的な話はどうしても信じられません。


 けれども、現実には説明のつかないこともまだまだあるようです。


 さて、この話を元にカクヨム異聞選集に応募しようかと思ったものの。


 オチ無し、盛り上がり無し。

 ぜんっぜんっ、物語にならない。


 でも体験談って、そういうものかもしれません。


 ちなみに、ほかの体験談だと、かつて京都に住んでいた1年の間に2回も金縛りになったことが……。

 あれも夜、寝入りばなにいきなりだったから、まったく脈絡もなく、これまた物語にはなりません。


 もちろん、京都は戦乱つづきの土地柄ですから、何が起きてもおかしくはないでしょう。

 平安時代には怨霊におびやかされていましたし、私が住んでいた頃には、たまに貴船神社の林から藁人形が発見されたりするとか。


 ちょっと脱線しました。

 さて皆さんは、お寺さんのお話をどう思います?

 怖い? 怖くない? 信じられない? 不思議?


 ちなみに葬儀の後に来る場合もあるらしいですよ。

 その場合は、遅くとも四十九日までに来るらしく……、「四十九日の忌明けまでは、しっかり御回向しましょうね」と。


 さすがはお寺さん。話の締めもしっかりしているようです。



※京都ではお寺さんのことを「おっさん」と呼びます。

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