第5話 人間が来たぞーぉ!

「あいつらです」

「ふむ…」


 全てを受け止めてやるとでも言いたそうな盾持ちの男と手練と思われる男槍使い、それに素質はありそうな女魔法使いと、最後に日本人のような女僧侶か。


 ―――どう見ても強者つわもの。どうやら我々ゴブリン族に警戒しているようだ。1人2人が血を流して倒れているあたり、殺したのだろう。蘇生魔法魂結びがあるとはいえ、同胞を手にかけられて怒らないはずがない。


 牽制でダイヤの槍を作り出し、人間共の足元へと打ち出す。


 が…

「うわっと、危ねぇっ!」


 何が危ないだ。余裕で避けてたろ。

 取り敢えずゴブリン族と人間の間に飛び込み、


「おい、何してくれてんだ。」

 場合によってはただじゃ済まさんぞ。


「驚いた。ゴブリンが人の言葉を話せるのか。」


 さっさと質問に答えろよ、おい…蘇生は時間が経つとできなくなるんだから。


「質問に対しては、警戒していたところに近付いてきたから反射でやっちまった。済まなかったな。」

「そうか。なら問題は無いな。」


 見たらSANチェックな雰囲気漂う死体に魂結びを掛ける。溢れた血が戻り、傷もなくなり、五臓六腑の動きが正常になる。実験台の反応通り。蘇生完了…


『済まねぇギンさん、助かった。』

 片方がゴブリン語でそう言う。死んで蘇生された感覚はあるらしいのだ。実験台曰くトラウマもんらしい。

『いいって事よ。次は気をつけろよ?』


 とか言ってると、僧侶の少女が俺に、

「い、今のって…蘇生魔法ですか!?」

 蘇生魔法がそんなに珍しいか?…珍しいか。

「ん、そうだが、何か問題でも?」

「おおありですよ!いや、問題は無いけど、なんでゴブリンが蘇生なんか…」


「それに、さっきの槍、見たら魔法で出来たダイヤだったわ。あんなの、土属性の最上位魔法クラスの技術よ…」

 女魔法使いがそんなことを言う。でもなぁ…短時間でいいならミスリルだって作れるんだけど。

「なに、各種最上位魔法が出来るだけだ。あれだって牽制のつもりだったんだがな。さてと、聞く意味はないかもしれないが、君たちに敵意は?」

「最上位魔法クラスを牽制に使うだと…ああ、分かり合えるとわかった以上、敵意はない。若くして死にたくはないしな…」

 どうやらこの人間達のリーダーは槍使いらしい。

「ハハハ…敵意がないなら我々は歓迎しよう。ようこそ。我がゴブリンの村へ。俺はギン。この村の連中ををまとめあげている。」

「僕はエイバル=ディンガー。パーティー『剣の流星ソード・ミーティア』のリーダーだ。こっちの盾持ちが、」

「ガロンド=アスタだ。ギンさんよ、よろしく頼むぜ。」

 おう、よろしく。と一言返す。


「リリア=ディンガーよ。魔術師として、色々聞きたいから、後で聞かせてもらうわ。」

 うーん…まあいいだろう。決定してるっぽいし。


「リン=タチハナです。僧侶です。よろしくお願いします。」

 …リン=タチハナ?ん、まさか。


「言ってわかるか知らないが、僕達はアルマリス共和国で冒険者をやってる。ランクは全員Cだ。」


 え、ランクC?適正はBだよな?


「ほう、この森に入ってくるあたり、実力者だとは思っていたのだが…Cか、適正はBだろう?」


「そりゃ、パーティーランクがBだからな。俺達のチームワークは完璧なんだぜ?」


 とガロンド。

 なるほど…パーティーにもランクがあるのか。いいこと知った。


 まあ、立ち話もなんだ。

「取り敢えず、うちに来な。詳しい話はそこでしよう。」

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