人形病が巡る時

人形病──……それは数多の人間を狩り尽くした奇病。罹ってしまえば、心が死んでいく。ぼろぼろと、感情が、死んでいく。


人形病の恐ろしい所は、末期になるまで気付けない事。

ほぼ罹った人は、感情が死ぬ様に気付けない。

心が軋みをあげて、壊れていくのに気付けない。


人形病に気づいた時にはもう既に遅かった。


有りと有らゆる国の機能者に、その病気は蔓延っていた。


それに気付いた科学者は言ったんだ








『本日世界は終わります』









その答えに世界の誰もが答えを返せなかった。

人形病は着実に世界を喰らっていたのだから。


数秒後の世界は、君の嘘と言葉に溢れてる

数分後の未来に君は生きているのだろうか

数時間後の夢はいずれ終わりを告げて


嗚呼……目の前に広がる夢幻は、一体何の冗談なのでしょう?


僕はただただ君と、たった一つの夜を過ごしたかった──……

それだけだと言うのに。


苦しみ紛れの夢に、たった一つの願いを告げる

夢の中の君は変わらない笑顔で言うんだ

『いつでも待ってる』なんて

嘘でしょう、君はもう居ないのに

そんな幻が、叶う訳なんて、無いのに


あぁだけど思うんだ

少しでも長く、君と

笑い逢えてたらどんなに良いだろうって

そんな夢はいずれ壊されると知っているクセに

僕に幻を見せて、崩れる


無意味な夢なら、見ない方が良い

苦しみに溢れた世界の

残酷さに気付かなくて済むから


君に告げた思いは、君に届く前に

弾けて潰れた、悲しみの檻に囚われた

僕の小さな願い事









『さよなら』









その一言が、君に聞こえる前に消えた

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