幻影に囚われし転生者

@flon

プロローグ 世界は続きを望まない

「殺してやる! 貴様だけ絶対にこの手で殺してやる!」


 肉体は熱を失っていく。だが、漆黒の炎は燃え続ける。

 瞳から世界が消えていく。広がるは暗黒。だが、瞳には確かに映っていた。自分を見下ろす憎き存在が。

 手が何かを掴む。それは足だ。感覚と世界を失っても、そうだという確信があった。


「そこにいたか。待ってろ、すぐに息の根を止めてやる」


 太股を掴み腰を掴み、首へと上っていく。

 腕が叫ぶ。心臓の鼓動が加速する。それらはもうすぐ殺せることへの歓喜なのか、それとも肉体の限界を訴えているのか彼にはもう判断がつかなかった。

 頭にあるのはただ一つ、目の前に存在を殺すこと。

 手が首を掴んだ。あとは、余力を全て指に込めるだけ。

 だが、それが訪れることはなかった。

 肉体から力が抜けていく。心臓に空いた穴から流れる血と共に抜けていく。

 彼の人生は、今この瞬間に終わりを告げた。これ以上は続かない。人は死んだら終わり。それが世界の理。



プロローグ 世界は続きを望まない 完


第一章 狂人が奏でし序曲 続

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