地下迷宮も突破出来ない奴がモテるわけない

黒服

 

相性力

第1話 不純な動機

 ——北にあるダンジョンに挑みなさい。



 まだぼんやりと眠る微睡まどろみの中……。

 未だ覚醒には至らない俺に向かって声がした。

 だがそんな思考のおぼつかない状態でも答えられる簡単な話。

 ……嫌です。



 ——女の子にもてますよ。



 嘘つけ。適当なこと言って行かせたいだけだろ。

 第一不可能だ。

 歩くだけで息切れする体力の無さ。

 階段を降りるだけで脚が震える小鹿のような筋力。

 無理無理、他を当たってくれ。



 ——ランキング順位を一桁切るたびに好感度MAXの女性を一人保証します。神の力で。



 ……え?


 一万位どころか、十万位を切っても彼女ができる?


 ワタクシめにお任せください! 必ずや攻略してご覧にいれます!



  —



「北のダンジョンに挑んでまいります。父上、母上」


「男が一度決めたことは最後までやり遂げるのだ」


「決して諦めずに頑張るのですよ」


 呼び止められることはなかった。

 俺は目の上のたんこぶだ。

 貴族の家系である我がセントウェル一族にとって、

 家から一歩も出ず惰眠をむさぼるだけの俺は邪魔者でしかない。


 だがそんな俺にも目指すものができて良かったなと思う。

 これ以上両親に迷惑を掛けない。しかも彼女ができるという話だ。

 上手くいけば『ランカー』という名誉も手に入る。

 流石に上位入賞は高望みだとは思うが。


 さっそく準備をすませて馬車に乗ることにした。

 両親にダンジョンに行く話をしたら、母がすぐ馬車を用意してくれ、

 父は旅費として金貨200枚を持たせてくれた。

 涙が止まらなかった……

 迷惑ばかりかけてた俺には感謝の言葉しか出てこない。


 ・・・


 ・・


 ・


「あなた。行ってしまいましたわね」


「ああ……うまく生きて帰ってこなければ良いのだが」


「ええ……どうか無事でないことを祈りましょう」


 彼の両親はそういうと、神の声発声器に向かって深々と祈りを捧げていた。


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