二振目 白鞘のいろいろ

 素材はほお

 標高五百m以上の寒冷地に生えるものが適すると言われますが、これは成長が遅いほど木質が密になるためです。そして伐採後十年程度寝かした後に鞘として加工されます。もっとも、最近は外材も多いそうですが……明らかに質が違います。

 白鞘は休め鞘・油鞘とも呼ばれ、油を塗った刀身を長期間保存するための鞘です。稀に白鞘に収める時は油を塗らないと主張する人もいますが、一般的には塗って収めます。

 逆に普通の鞘(漆塗り)に収める場合は、油を塗りません。これは油が浸透すると漆にひび割れなどを生じさせてしまうためです。(漆は鞘の強度と多少の耐水性を持たせるため)

 白鞘は保管用ですから、鞘内部が掃除出来るようにと簡単に分解できる造りです。当然ながら戦闘には使用できません。白鞘持って敵に突入というのは、一撃必殺だけを狙い必死(必ず死ぬ)という心意気なのでしょう。


 本来は卵のようなボッテリした断面形状で厚く太いものです。これが表面の汚れや傷に応じ、横腹を削っていくため徐々細くなっていきます。但し、現代などに制作された白鞘などは、見た目重視で最初から薄く削られている場合もあります。


 大名家伝来の白鞘は、薄い木板で巻いて留めてある場合があります。これは接合に使用する続飯そくいい(米を練った糊)を少なくし、鞘が簡単に割れ中の掃除し易くするためです。但し、現代では装飾的に巻かれている事も多いです。

 徳川家伝来の短刀などの白鞘は鞘尻が平らと聞きますが確証まではありません。鯉口部がすり鉢状に凹む場合もあります。


 新しいものは白く、古いものは濃い飴色です。

 古い白鞘は木質が密で締まった感じで重厚感があります。何より上質な物は木目が見事に合わさり、接合部も念入りに見なければ分からないぐらいの処理がされています。

 一方で最近制作された白鞘の感じですが、朴よりや桐のような質感で妙に堅かったです。軽くスカスカした質感で、疑問を感じました。

 そして両腹は最初から平らに削られ形が整えられています。木目の合わせまで考慮されておらず、木目が大きく食い違います。また、接合部の線も目立っていました。

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