苦悩と共に戦う異形の戦士

もし、あなたが大人が観るべき特撮ヒーローの物語を欲しているなら是非、この物語を読むべきだろう。

「炎陽神 エルガイア」は、2016年に某TV番組で企画化されたが惜しくも映像化されなかった作品であり、これはそのシナリオをそのままノベライズ化したものである
……というのは嘘だが、良い意味でそう言って騙されても良いほどの熱さとクオリティだからだ。

あっけなく人が死に、人の論理も価値観も通用しない無慈悲な相手に無力なはずの主人公が「可能性」から選ばれ、苦悩や悲しみの中で戦ってゆく……正直、今のラノベでそんな話を読もうと思う読者は少ないだろう。

だが、「努力もなくチートスキルでザマァする」「大した理由もなく美少女に好かれイチャイチャする」そんなフニャけたラノベばかり欲する読者も「戦う掟を課せられた者の運命」を描いたこの物語を一度くらい読んで知るべきではないか。何の努力もなく得られた力で異世界を謳歌する物語とは真逆のこの物語。そこに描かれたもの、「異能の力は人の運命をただ楽しい結末に導くものではない」ということを、そろそろ知ってもいい頃ではないか。楽しいだけのストーリーで綴られたラノベブームが一体何年続いたか。読む者の人生の糧にならぬ物語ばかりが、そうやって持て囃されて危惧を抱く出版社もないままに。
「炎陽神 エルガイア」を読んだ者は、人気があるだけで受賞したり出版された「血や涙や悲しみから目を背けて描かれた物語」の空虚さをきっと知るだろう。

……だからこそ、この物語に光を当てようと手を挙げる出版社が未だ現れないのかも知れない

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