第21話 異世界の作り方⑤ シナリオ編-4


クライマックスフェイズ『森の洋館にて』 登場:全員


描写:

 木立を抜けると、朽ちた石造りの洋館が見えて来ました。城、と書いてありましたが、ほとんどの施設は崩れていて、建物はひとつしか残っていません。ボロボロの外壁は茨が這い、さっきまで晴れていたのに空を雲が覆いはじめました。近づくと、獣の生臭いにおいと、何とも言えないぶきみな雰囲気が立ち込めているのがわかります。

 建物の前で眩い金髪をなびかせた人物が皆さんを待ち構えています。

 近づくと、彼が純白の司祭服を着た若い男であることがわかるでしょう。

 青い瞳をしていますが、彼のまとう雰囲気は、アナザーワールドの住人というよりは、皆さんに近いものでしょう。


 適当なとこで茨登場。

 

茨「ようこそ、女神に導かれし愚か者の皆さん。そこの駄犬の飼い主です。イリュージョンキング改め《ウルフズキング》とでも名乗らせて頂きましょうか」

茨「何か質問がありますか? こちらとしてもとっとと現代に帰還したいので、てっとり早く済ませましょう」

茨「人狼を生み出しているのは私じゃありません。それが女神が決めた設定だってだけです。ここは女神がレネゲイドの力によって生み出した妄想の世界。ゆえに、人狼の親も彼女なのですよ」


 茨たちもこの世界に閉じ込められており、人狼の王とその手下、という設定を履行しなければ脱出不可能という状態だった。ゆえに、茨と楠木はPCたちと敵対し、倒されることを望んでいる。


《戦闘について》


 プレイヤーは茨&楠木を倒すことで、シナリオの目的を達成する。

 もしもアナザーワールドの支配者である女神を倒すことを望むなら、女神は召喚に応じる。

 その場合、異なる勝利条件を設定する。


・女神を呼びださなかった場合→茨、楠木の二人のHPをゼロにする。

・女神を呼びだしたかった場合→女神のHPをゼロ+茨と楠木のどちらか、あるいは両方を戦闘不能にする


 戦闘のために召喚した女神は、プレイヤーたちが敵意を抱いていることには気が付いていない。彼女は無垢な子供であり、それ以上でも以下でもない。女神の望みは楽しい物語が永遠に続くことで、それを逸脱することはない。


女神「どうして? 私は悪いことなんてしてないよ」

女神「PC3くんならわかるよね。あたし、毎日が辛くて、辛くて、寂しくて仕方なかった」

女神「でも、お話の世界でならお金持ちにも、魔法使いにも、天才にも、勇者にだってなれる」

女神「物語ってすばらしい。そうでしょ? だからこの社会に居場所のない人たち、毎日が辛くて辛くて堪らない人たちに幸せな物語をあげるの。だから、この世界は消させないよ!」

女神「……そっか、そうなんだ。③くんも百合子のことが嫌いなんだね……」


 勝利条件を達成したら、バックトラックを行う。


エンディング『日常へ』登場:全員


基本方針:

※エンディングは女神に関するものしか用意しないが、プレイヤーの希望をきいて、小林茉莉、楠木蓮(またはほかのNPCやPCどうし)を主軸にしたシーンを追加する。


 プレイヤーは夏木支部で目覚める。


描写:

 PCたちが目をあけると、そこはイリュージョンキングの拠点であるマンションの一室でした。

 部屋の中には小林茉莉ほか、行方不明者たちが気を失った状態で倒れています。


※中にはイリュージョンキングのメンバーとみられる者も倒れている

※茨と楠木はどちらかが生き残っている場合、この時点で瞬間退場を行い、離脱する。どちらも倒していた場合、その処遇はプレイヤーに委ねる。


茨「申し訳ないけど、私はこれでサヨナラさせて頂きますよ」

茨「私もリーダーとして最低限やらなければいけないことがあるのでね」


《エンディングでの女神の扱いについて》

 女神については、クライマックスで戦闘を行い、彼女を倒したかどうか、それまでの展開で関わりが深かったかどうか(ロイスの取得など)で最適な結末を判断する。


・ケース1:女神を倒さず、これまでの展開で、プレイヤーから女神に対する働きかけが無い場合。


 女神はあくまでも女神のまま、また次の犠牲者を求めて去って行く。


女神「人々を助けて下さってありがとうございました、救世主様」

女神「ありがとう、PC3くん、とっても面白いお話だったよ。また遊んでね!」


 本は手元から何時の間にか消えてしまい、回収不可能となる。


・ケース2:女神を倒さず、プレイヤーたちから女神への働きかけが大きかった場合。


女神は自分が正真正銘の夢野百合子であること、そしてどうしてアナザーワールドの女神になってしまったのかをプレイヤーに話す。


女神の正体:

百合子が行方不明となったあの日、百合子は両親の激しい言い争いに耐え兼ねて家を飛び出しました。飛び出したことに、ケンカ中の両親は気がつきません。

その先で事故に遭い、それと同時に彼女はオーヴァードとして覚醒しました。

ですが彼女の帰りたい場所はその時点で既に消失していて、誰にも気づかれることなくあっという間にジャーム堕ち。「物語の中に入ってずっとずっと楽しく暮らしたい」という妄想から、Eロイスを発動させました。

その後はEロイス、妄念の姿と虚実崩壊を使い本形態になって人を異空間に取りこみ、異空間の中では女神の姿になって人々を物語に参加させて、それを楽しむ生活を続けていたのです。


※彼女はジャームになった後も、PC3を大切な幼馴染だったという記憶を持っている。だが生命としての在り方がまったく違ってしまい、もう元には戻れないことを悟っている。そのうえでPC3に語りかける。


百合子「PC3くん。パパとママにもう喧嘩しないでって言ってくれる? またみんなで一緒に暮らそうよって説得してくれる……?」※


※幼い少女のままの彼女だが、両親の仲が元に戻ることはないこと、そして幸せな日々が戻って来ないことは理解している。ただ、PC3の優しさや思いやりを感じたい

だけなのだ。だが、たとえどんな優しい言葉をかけたとしても、ジャームとしての自分を変えられるわけではない。

 PC3がどんな返答をしようとも、彼女のジャームとしての心が変わることはない。

 それを自らも察したのだろう。

 百合子は《魔本》としての自分、ジャームである自分を終わらせることを望む。


百合子「……ありがと。でも、ごめんね」

百合子「だって、③くんがそう言ってくれて嬉しいハズなのに、私は何も感じないの。もっともっと面白い本を読みたいなって、それしか感じない。これがジャームになるってことなんだね」

百合子「ばいばい、③くん」


 百合子は泣き笑いの表情を浮かべたまま、本の姿に戻る。

 この本をどう処分するかは、PC3およびプレイヤーの判断に任せる。


・ケース3:女神を倒した場合


 女神を倒した場合、彼女は瀕死の状態でマンションに現れる。

 PCたちの働きかけがあれば、ケース2で開示された情報を知らせる。

 女神の台詞の最後に、以下のようなものを付け足す。


百合子「私はもういなくなるから、本の世界にいなくなるから、きっと幸せになってね。物語の最後は幸せになるんだから……」

百合子「さよなら、またね」


 百合子は最後の力を振り絞り、自分の姿を本に変える。

 できればPC3の手の中で、本は砕け散る。


 エンディング1 終了


 

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