第3話 デス・ストーリーは突然に
どうやら妹とオタマ姫は意気投合したらしい。
「家族が増えたみたいで楽しいね!」
思えば、ぱせりは俺が学校から帰るまでの時間はずっと一人の時間が多かった。動物好きな妹だが、俺たち2人だけではペットを飼うこともできない。そう思うと、オタマが来て家がにぎやかになるのは良かったのかもしれない。
いや、良くない。俺の人生はどうなるのだ。
「オタマさんオタマさん、ちょっとよろしいでしょうか。」
「なんじゃ?大和。」
「いえね、僕はまだ16歳の若造で何のとりえもない男ですよ。ましてや海で溺れて死にかけるような男はとても海の女神さまのお眼鏡にはとてもかなわないんじゃないかなー…と思いましてね、へっへっへ。」
「そう自分を卑下するでないぞ大和。なかなかわらわ好みの顔だちをしておる。叔父上殿が出雲データベースを物理ハッキングして盗んだ情報によると家事も万能だと言うではないか。わらわは家事が一切できぬからのう。」
シオツチのおじさんそんなスキル持ちなのか…物理ハッキングってのが何かは知らないが。っていうか確か家事手伝いって言ってたはずだが家事が一切できないとは。
「それに親父殿が言うには出雲縁結びアプリで93%の相性値だったというからのう。あの神アプリは女神の間でも当たると大評判なのじゃぞ。」
オイオイオイ、ガッツリ盛ってるわあのオッサン。まあ…たかがアプリの数値だ、68%は高いと言ってたから大丈夫だと考えよう。
「姉上とそのクソ義兄との相性はたった72%の低相性だったからのう。大当たりじゃ。」
「グェーッ!」
「姉上は泣いて家に出戻るだけじゃったが、わらわが姉上の立場なら相手を噛み殺しておったかもしれんのう。」
「あ…ああ…」
「お兄ちゃんどうしたの?顔が真っ青だよ?大丈夫だよ!神様のアプリを信じて!」
ぱせりが笑顔でグッとサムズアップした。妹よ、それは追い打ちだ。
落ち着け、相性68%とはいえ、オタマに対して何もひどいことをしなければ殺されることはないはずだ…。俺は女の子に優しい。
「大和よ。まだ結婚していないとはいえお主はわらわの旦那候補なのじゃからな。浮気は絶対に許さぬぞ…?」
「ああ、俺は浮気なんてしない。」
多分しないと思う、しないんじゃないかな、するなら死を覚悟しておけ。
頑張れ大和、今は自分の命を最優先に考える時だ。死亡フラグは徹底して回避し、選択肢は慎重に選ぶのだ。そして、長中期的計画としてなんとかオタマには海に帰ってもらうのだ。油断一秒怪我一生マッチ一本火事の元の精神だ。
「なんだ、二人とも居るじゃないか。ただいま、大和、ぱせり。」
「お父さん!」
「父さん!なんだ、さっきのインターホンは新聞の勧誘じゃなかったんだな。」
「そろそろお盆だからね。瑞穂…母さんをお迎えするのは家族そろってじゃないとね。」
そういえば、どんなに不在がちな年でも父さんはお盆だけは必ず家に帰ってくる。そして、家族みんなで母さんを迎え、送る。
「お盆か…仏教の風習じゃな。わらわは仏教の風習には詳しくないのじゃが。」
「おや、お客さんかい?可愛らしいお嬢さんだ。ぱせりのお友達かな。」
「うん!それでねー大和お兄ちゃんの」
「あー、うん、まあ、そうかも、そうじゃないかも。」
「ぱせりと仲良くしてくれてありがとう、ゆっくりしていきなさい。」
「うむ、大和の親父殿、よしなにな。」
「…ところで大和はもうすぐ17の誕生日だったな。」
「ああ、もう来月17になるな。」
「早いものだ…。そろそろ話しておくべきなんだろうな。いや、もう17なら少しでも早い方が良いか…。」
「なんだ?難しい顔して。」
「大和、今まで隠していたけど、実はお前には許嫁がいるんだ。」
父のその発言で一瞬にして場の空気が張り詰めた。俺はどこで間違えたんだ。
母さん。俺、お盆の前にそっちに行くかも。
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