パパが戦争を始めてしまったのですけどどうしましょう?

神村律子

第零部 

プロローグ 開戦前夜

 西暦二千四百年。


 国連軍を完全掌握して軍事独裁国家地球帝国を建国し、全人類に恐怖を与え続けた皇帝アーマン・ダスガーバン。彼はそのコンプレックス故に虐殺と弾圧を繰り返し、人類史上最多の殺人を犯した支配者となった。

 その息子アーベルも父に劣らず残虐で、数多くの市民が犠牲となった。

 ダスガーバン帝国は永遠に続くかと思われた。しかし、その牙城は思わぬところから崩れ去る。


 西暦二千四百六十九年。


 アーベルの息子エスタルトとザンバースが、父に反旗を翻し、レジスタンスに加わったのだ。

 アーベルは激怒し、息子二人の暗殺を命じたが、後継者に見捨てられた皇帝は哀れだった。

 彼に従う者はほとんどおらず、帝国軍は次々に撃破され、皇帝親衛隊すら敗走した。

 二人の息子の反逆から十一ヶ月。遂に地球帝国は崩壊し、アーベルは市民のリンチを恐れるあまり、毒杯をあおって自ら命を絶った。こうして、地球帝国は完全に消滅し、悪夢の時代は終わった。


 西暦二千四百七十年。エスタルト・ダスガーバンは地球連邦の建国を宣言し、民主主義、共和主義に基づいた国家を樹立した。人類史上初の地球規模の民主国家が成立したのである。

 地球中の市民が歓喜した。死ぬまで恐怖に震えていなければならないと思っていたが、突然光が降り注いだのだ。皆、涙を流して祝杯をあげた。


 そして、更に時は流れた。


 西暦二千五百年。地球連邦建国から三十年。連邦国民は夢から覚める事になる。

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