この普通で、愛すべき平坦な世界を生きるために。

普通の、終わりのない日常から逃げ出したかった少女と、
普通の、誰にでもある日常をこそ探し求めていた少女の、
「世界の果て」を目指した、ほんの短いひと夏の逃避行。


退屈で、変わりがなくて、灰色で、平坦な学生時代に、抗えない世界の不条理にぶつかること、それを呪うこと。
「世界の終わり」を夢想しながら、目の前に広がる世界をどうしようもできないと絶望し続けること。

そんなことが、きっと誰にでもあり得るし、それがあるということを、誰もが忘れてはいけないことだと思うのです。
――そう思うことは、感傷的でしょうか。


私は、この小説を読みながら、生まれ育った田舎で見続けていた、夕暮れの紅のことを思い浮かべていました。
少女たちが目にしたあの「世界の果て」の景色は、いとも容易く私の目の前にも思い浮かんで、なんとも言えない寂寥感を胸に抱かせました。
同じものが、私にもあった。そしてもしかしたら誰かにも、こんな風景があるのだろうなと。


何もかもがうまくいく自由な世界ではないけれど、生きていくということは『どうやって生きていくか』ということに向き合い続ける、絶えざる挑戦であるということを思わされる、切ない青春の小説でした。