これは本当に、フィクションなのか――?

シリアの空爆と、日本の横領事件。
一見すると関連のなさそうな二つの事件が、しかしあるところで繋がっている。
この作品はフィクションだが、今まさにこの現実世界で類似の事件が進行しているのではと思えるほどのリアリティがある。
そして復讐に燃える彼らもまた、耐え難い苦しみを受けた一人の人間であるという衝撃。普段耳目に触れる情報からは感じることのなかったものだ。

その一方で、ラストの飛行機内での攻防、迫るタイムリミットとの戦いは手に汗握る思い。
それになにより、何ら特別ではない人々が協力して困難に立ち向かう、その展開が私にとって最高だった。
主人公のイザは銃器の扱いに長けているとは言っても、戦闘力はさほどでもない。彼一人では何もできなかっただろう。
一人だけでは何も変えることはできなかった。
しかし、イザや圭吾、友香やエルカシュ、偶然その場に居合わせた人々――その一人一人が立ち上がったからこそ、あのラストはあったのだ。

その他のおすすめレビュー

古月さんの他のおすすめレビュー73