第38話実験

 魔物達があげる狂乱の叫びは大地を震わせている、トロールとオーガは入り乱れ血飛沫が散乱していた。

 辺りは血の匂いが充満し、臓物が散乱した光景はもはや地獄と言っても差し支えないだろう。


「グロッ! 俺たちはキレイに倒そうぜ」


「う、うん。私、無理かも」


 フローラもあまりの匂いと気持ち悪さに吐き気をもよおしたようだ。

 無理もない、オーガの戦い方は力任せにトロールの頭蓋骨をかち割り脳ミソごと叩き潰していた。

 だがそんな状態になっていてもトロールはHPが残っていたら再生を始めていた。


「休んでいろ。なんなら後ろで休んでいてもいいぞ」


「あ、あぁ。すまない」


 フローラは後ろに下がって行った、フラフラしており戦闘に復帰するには相当な時間を要することになるだろう。


「さぁ~、どうしたらいいのかな」


 正直あれだけの再生能力を見せられてしまうと自分の魔法が効くかどうかすら怪しい、大地魔法では貫くことは出来てもすぐに再生されてしまいそうだ………どうしよう。

 他の攻撃手段としては火炎魔法だろうか。普通にやったところで焼いたところから再生されそうだ。どうしよう

 何とか再生を止める手段はないだろうか。

 オレはオーガ達が戦っているところ1人だけ冷静に辺りを見渡し状況を見る。

 オーガ達は力任せに殴り続け、1体1体確実に殺していっていた

 この戦いかたではダメだもっと別のやり方を………。


「オマエ……ナニモノ…ダ?………コロス」


 一匹のトロールが棍棒を高く掲げドスドスと大きな足音をたてながら走ってくる。

 走ってくる途中で仲間の死体踏みつけてくるが本人は然程気にする素振りも見せずにいた、巨大な体で踏まれた仲間のトロールは再生をしていたが頭を踏み潰されることにより息絶えてしまう。


「うわ!!」


 関係ないとはいえ仲間を蔑ろにするトロールに憤りを感じてしまう、どうせフローラが見ていないんだ、残虐な殺しかたをしてやる。


「お前は実験体モルモットにしてやる。アースバインド」


 血で濡れた大地から作られる土の鎖の色は血で変色し錆びた鉄のような色になる。

 作られた土の鎖はトロールの体に巻き付き動きを封じる。


「コンナ…モノ……ッ!?」


 トロールは自分の怪力で土の鎖を絶ち切ろうとするが土の鎖がさらに食い込ませるだけで終わってしまう。


「バカか? テメェーの力ぐらい分かってんだよ、切れるような作り方するわけねぇ~だろ。

 アースソード」


 初めて使う魔法だが名前からして土で剣を作り出す魔法だと予想していた。

 地面から土が盛り上がり剣の柄つかが形成され、徐々に鍔つばも出て来て最後には刀身ができる。

 予想は間違ってはいず、土で剣が作られたオレの前を漂っている

 見たところ、かなりの切れ味がありそうだ、形は日本刀のような形状になった。この世界では珍しい形だがどうやらオレの深層心理がこの形にしたのだろう。

 魔法で作られたとは思えないほどにキレイな出来映えだった。一見すると普通の剣で、土から作られたとは気付かない。


「おぉ~」


 目の前で剣が生成されているところをみて思わず感嘆の声がでてしまった、なんか、魔法を使っているっ感じだ! 今さらって感じだがこの喜びは使う度に何度も訪れる、そして今後もそうなるだろうと思う。


「もう武器とか買わなくていいじゃん! これからは作るか」


「クソ…クソ……クソ」


 トロールはまだ抵抗を続けていたがオレの作った土の鎖はビクともせずにいた。

 まぁ~アイツがどれだけ暴れようと壊れないように作ったからな

 それより今はこの剣の実験をしなければ、いやそれより一回魔眼を使って見てみるか。

 どういった表記になるのか気になる。


 《武器名:断罪の刃

 所有者:ミヤマ リクト

 製造者:ミヤマ リクト

 製造方法:大地魔法

 説明:込められた魔力は膨大で、罪深き者への攻撃力が増す。

 獲得能力:なし》


 思いの外強くてびっくりしてしまった。

 アースソードという魔法は土の剣を作り出す訳ではなく剣自体を作り出す魔法だったようだ。


「じゃーお前の体で試すか」


 オレは拘束されて動けないトロールへ向かってゆっくり歩いていく。

 そして断罪の刃を高く掲げ一気に降り下げる、刀の刃はトロールの体を容易く切断し大きく太い腕が地面に転がった。



「グガァ……ア………ア…ゼッダイ……ゴロズ」


 トロールの呼吸が乱れ、額には脂汗が滲んでいた、殺意のこもった目で睨んでくるトロールを無視した。

 どうやら痛覚があるようだ。

 切り落とした腕は何度か痙攣し動かなくなる。

 そして切り落とされた傷口からは既に新しい腕が生え始めていた、その気持ち悪い光景に吐きそうなったが何とかこらえる。


「うっわ。きめぇー」


 オレはある思いつきでトロールの傷口にある魔法をかけた。


「フレイムボール」


 再生されるはずの傷が塞がっていたらどうなるのだろうとおもってやってみたら成功しトロールの再生は止まった。


「やった! 成功だ」


「ゴロズゴロズゴロズゴロズゴロズゥーーー」


 トロールは痛みで顔を歪ませ、唾を撒き散らすように話す。その全てに知性を感じさせない。


「うるせぇー」


 オレはトロールの頭と首を切り離し火炎魔法で傷口を焼く、トロールは再生する事なく息絶える。

 これがトロールの攻略方か、意外と簡単に倒せるな…そうと分かれば………。

 オレは今の手順で殺しまくった。


 1、アースバインドで拘束

 2、頭を切り落とす

 3、火炎魔法で傷口を塞ぐ


「グハ」


「グフゥ」


 様々な声をあげて死んでいく。

 トロールは着々と減っていった、最初は150体くらいいたのにも関わらず今は50体くらいになった。

 ほとんどはオレが倒したのだが途中で復帰したフローラも戦いに参戦していた。


「フローラ! もう大丈夫なのか?」


「うん、遠くで見てたけどコイツら自分の仲間食ってやがった」


 声は普通に聞こえるがそこに含まれる感情は苛烈なものを内包していた。


 フローラは俺とは違い幻惑魔法を使い戦っていた、幻惑の内容はオーガがトロールに見えてトロールがオーガに見える幻惑だ。

 簡単に言うと味方の姿が敵に見えると言う魔法をかけた、幻惑魔法をかけられたトロールは仲間に襲いかかり殺していった。


「だいぶ数が減ったし俺たちは最前線から抜けよう」


「だな。もう、コイツらの面すら見たくねぇ」


 フローラは最後に襲いかかってきたトロールに幻惑魔法を使って嫌気がさした感情が見える。

 そう言うフローラを連れてオレは最前線から離れ少し後ろに下がる。


「今回の戦いでどれだけレベルが上がったか見てくれないか?」


「あっあぁ~」


 フローラに言われるがままフローラにステイタス、能力閲覧の能力をつかう。



 名 フローラ・クロウリィー

 称号  忌み子 思いし者

 レベル 72→86


 HP 1634(+300)→2197(+300)

 MP 2631(+300)→3342(+300)


 ATK 593(+300)→831(+300)

 DEF 637(+300)→968(+300)

 INT 1092(+300)→1418(+300)

 RES 831(+300)→1021(+300)

 HIT 610(+300)→934(+300)

 SPD 562(+300)→824(+300)



 《個体名:フローラ・クロウリィー

 種族:幻魔 忌み子 (幼体)

 種族能力:幻覚魔法強化 近接戦闘脆弱

 使用可能魔法:幻覚魔法 幻惑魔法 雷魔法 闇魔法 状態異常魔法 魔法多重起動 非戦闘系統魔法強化

 個体能力:力望者(戦闘時においてステータスに大幅な補正がかかる、またレベルが上がりやすくなる)》



 フローラのレベルは思いの外上がっていた、幻惑魔法を使って戦ったことを加えたとしても上がりすぎではないか? 倒した魔物とレベルアップに大きな矛盾が生じている。

 待てよ………フローラがこれならオレは?

 すかさずオレは自分のステイタスを確かめる。



 名前 ミヤマ リクト


 称号 魔眼保持者、牛殺し、早熟せし者


 レベル 87→112


 HP  3195→3821

 MP  4732→6193


 ATK 2861→3821

 DEF 2951→3950

 INT 2791→3697

 RES 2857→3857

 HIT 2763→3659

 SPD 3219→4373


 《個体名:三山 利久人

 種族:異端の半吸血鬼アウトサイド・ハーフヴァンパイア

 種族能力:恐怖支配 B 殺気凶悪化 A

 身体能力増加 S 憎悪倍加 S


 個体能力:斬撃耐性 A 打撃耐性 S

 短刀術 SS 切断耐性 B 剣術 C→A


 解放能力:魔法多重起動、魔力操作


 魔物能力 ドレインタッチ 水流操作 剛力 聴覚鋭敏 糸操作

 糸強化 毒付与 毒生成 糸生成 麻痺毒付与

 自動MP回復 悪魔召還 天眼 再生 硬化 吸収 奮戦


 マジックアイテム能力 ステイタス閲覧 能力閲覧 火炎創造 致命傷の盾 MP小増加 特定転移


 行使可能魔法

 初級 火炎魔法(ファイヤーボール、火種生成など)

 中級 火炎魔法(フレイムボール、フレイムサークル、フレイムランス)

 初級 大地魔法(アースアロー、アースランス、アースソード、アースウォール、アースバインド)

 中級 回復魔法(傷の治療、毒の治療)


 所持魔眼:ハイリーディングアイ

 効果、視認した物質の名称、事柄を読み取る、魔法の本質を見抜き、解読、理解

 動きを読み取り

 思考を読み取り


 上位能力:理解者

 理解した物体、魔物の特徴やスキルをコピーすることができる(一つの物体からは一つだけ、魔物のスキルも同様で一つだけ) 


 獲得能力 成長(レベルアップにかかる経験値がかなり減る。またパーティーにも効果あり)

 超再生(再生より速く再生できる。また再生にかかるMPも少なくなっている)

 自動HP回復(自動的にHPが回復していく)》


 ステイタスも軒並み跳ね上がっており凄まじいことになっていた。

 正直ハースグレードがどれだけ強かったのか知らないが着実に近付いている感覚があった。もしかしたらもはや勝てるかもしれない。

 いやそれは慢心だろう。

 危険な考えだ、気を付けなければ。

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