第33話総合強力
「それは………村の皆を見返すためだよ。わりーか?あいつらはあたしのことを忌み子だとか言って村から追い出しやがった。私は強くなりたい。村の誰よりも、そして見返してやるんだ」
フローラはうつ向いたまま今まで言えなかった物を吐き出した、涙と共に。
「あれ? なんで涙が、くそ!止まれ、止まりやがれ」
だが涙を意識してしまったらもう引き返すことはできない。
止めどなく溢れてくる涙を荒っぽく拭うが止まることの知らない涙はフローラの本音を引き出す。
「わたしは…私は……皆に認められたい。それ……だけ」
「そうか。お前も大変なんだな、だがもうお前は一人じゃない。オレが………。」
オレは最後の言葉が喉に突っ掛かり言葉にすることが出来なかった。
仲間を持つことに恐怖しているのだろうか? また己が無力なせいで誰かが傷付くかも知れない。
傷付くだけならばまだましだ死んだとなると立ち直れない、最後の言葉を口に出来なかったのは事実だがフローラは次にどんなことを言おうとしたことを察してさらに涙が溢れてきていた。
「あ…あぁぁぁ~あぁー」
1度流れ始めてしまった涙は止まることを知らず本人の意思とは無関係に流れる。
最初はフローラも何とか隠そうとしていたが、オレが本音を言って、フローラが本音を言ったことにより見えない絆が芽生えた気がした。
フローラはひとしきり泣いた後己の恥ずかしい部分が見られたことにより服の袖を掴みうつ向いている。
「お前の目的は分かった、出来るだけ協力しよう。だが条件がある」
「じょ、条件ってなんだよ!」
少しだけ上ずった声を出し顔は上げずに強がる姿が妙に面白い、涙で濡れてしまった顔を人に見られたくないのだろう、そんな心中のささやかな抵抗はフローラのプライドの高さを表しているのかもしれない。
「それはな、単純なことだ。オレはお前に協力する。だからお前もオレに協力しろ」
「お互いに助け合うってことか。そういうのは嫌いだけど人間のお前となら面白そうだ」
フローラはオレのことを人間だと思っているようだ。
なぜだろうか? だが考える余地もなく原因は明白だった、バルムンクの作った指輪の効果だろう。
間違いを訂正しておかないと後々めんどいことになりそうだな。
「あのさ。オレって人間じゃ無いんだけど」
「なに言ってんだ? 狂ったか」
フローラは怪訝な顔になる、まぁ~フローラの疑問もよく分かる、人間は人間で魔族は魔族でしかない。お互いがどれだけ望んでも原則変わることはない。
「あぁーどう説明したら。分かりやすいんだ………半分人間で半分吸血鬼だ。うん
そうとしか言えん」
「あ?さらに訳わかんねぇーよ。親が人間と吸血鬼ってことか?。あっでも子は片方の種族に偏るはずだし………。あぁーもう訳わかんねぇー」
フローラは考え抜いた末に分からず頭を抱えてしまった、まぁ~オレも自分がどういう種族なのか、よく分かってないし。
「つかおまえどう見ても人間じゃん」
「いやいやだから半分は違うって。今は隠してるけど、ほら」
オレはいつまでも信じてくれないフローラのためにバルムンクから貰った指輪を外す、とたんに内包していたヴァンパイアとして魔力が開放され辺りにはオレの薄暗い魔力が充満した。
まぁ~信じられないのも分かるが。
人間がオレは魔族だぁーと言っても信じられないのは当たり前だ。
「おまえ…いやあんた。ヴァンパイアかよ」
「“半分だけ“だけどな」
ようやく納得してくれたのかフローラは何回か頷く。
「道理で幻覚がかかりにくい訳だ。せっかく助けてやろうとしたのに」
「ん? たすける、なんのことだ?」
どうことか分からなかったから真顔で聞くとフローラは顔を真っ赤にして怒り始めてしまった。
「私があんたを助ける? 訳が分からないんですけど」
「いやだって……」
「うっさい! ほら、お互いに助け合うって言ってたけど、どうすんの?」
フローラは赤い顔のまま次の話題へと無理矢理話を変えてしまった、ツンデレかよ! まぁ~妙に似合ってるけど。
「まぁ~いいや。先ずはお前からな。オレに幻覚魔法をかけ続けることは可能か?
それができるならレベルが上がり続けるってことになるだろ」
「なぜそれを!」
オレは無言で左目の魔眼を指差す、それだけでオレが何を言いたいのか分かったようで納得してくれた。
「ちょっと待ってな。今から幻覚魔法を使うから」
フローラはそういうと魔力を溜め始めた、いや正確に言うと魔力を集めて魔力の質を変えているように見えた。
「なにしてんの?」
「あ? どうせなら二人とも同時の方が都合がいいだろ。戦闘中に邪魔にならない幻覚を作ってんだよ」
意外に優しいんだな。
まぁーそれが出来るなら是非ともやってほしい、本当は幻覚を見せ終わって貰ったらオレが魔獣のいる場所を聞いて殺しにいこうと思っていたんだけどな。
お互いに利益が早く出た方がいいからな。
「終わったぞ。目を閉じてこっちを見ろ」
オレは言われた通りに目を閉じ顔の方向をフローラに向ける。
「魔法をかけるぞ」
「あぁ、分かった」
目を閉じているのにもかかわらず視界には靄みたいなものが出現する、視界に表れる靄みたいなものはフローラがかけた幻覚魔法による効果だろう。
「なんだこれ?」
目を開けるとそこには今までいた少女の姿はなくいたのは見たことも無いような美女がいた。
誰が見てもその美しさに嫉妬してしまうほどの美しさを持ちながらも可憐なイメージすら持ち合わせる美女を目の前にして一瞬見とれてしまう。
だがオレは突然表れた美女に警戒してしまう。
「誰だ!」
オレは即座に臨戦態勢に変え目の前の美女がどういった行動に出るかよく見ておく。
「んだよ! 私だよ!!」
目の前の美女は手を忙しなく動かした焦っている様子だった、どういうことだ?
「私だよ! フローラだ」
フローラ? 何をいっているんだ?
いや待てよ幻覚魔法をかけると言っていたがこういうことなのか?
「フローラ…なの……か?」
あまりの変化に驚き声が裏返ってしまう。
相手にどんな容姿に見えるかすら変えられるとしたらかなり有効な魔法だろう。
「そうだよ。まったく…ビビらせやがって」
「すげぇーな………こんなことも出来るのか!」
「まぁ~な。でも幻覚魔法は扱いが難しいから使い勝手が悪いんだよ」
フローラは美女の姿のまま乱暴に髪の毛をかきあげた、せっかくの綺麗な髪の毛を乱雑に扱うもったいなさに思わず声がでてしまう。
「なんだよ?」
「いや、なんでもない。つかその姿はなんだよ」
「あ? これは私の6年後の姿だよ」
え? ちょっと待てよ! あの生意気そうな子供がこんな美女に変わるのかよ………。
年齢の計算が会わないだろ、だって目の前の美女は推定年齢23歳位なのに幻覚魔法前のフローラは14歳~16歳にしか見えない
「6年後って……、変わり過ぎだろ」
「そんなにか! どんな姿なんだよ?」
美女になってしまったフローラは乱暴に座りあぐらになる、綺麗な姿で乱暴なことをされると少し残念な気持ちになるがフローラの美しさは少しも薄れてはいなかった。
「すっげぇ~残念」
「な、なんだって!」
フローラは今にも暴れだしそうなほど怒り始めてしまった、まぁー無理もないだろう。
言い方があれだったからな、次はもう少し言い方を考えないとな。
「残念って言ったのは凄い綺麗なのに乱暴な態度が残念って意味だからな。せっかくの綺麗な黒髪を雑に扱ったり、女の子なのにあぐらなんかして恥ずかしくはないのか!まったく
本当にもったいない他にも………」
「分かった!分かったからやめてくれ!!」
さっきまで怒っていたとは思えないほど照れており顔を真っ赤にしていた
美女の姿のまま照れる仕草にはドキッとしてしまう
「ま、まぁ~いいや。それよりオレが次はオレが強くなる番だな
強い魔物がいる場所ってどこだ」
「何をもじもじしてんだ?まぁ~いいや魔物はあっちの方向にダンジョンがあるけどかなり強いやつしかいないから~あっちの平原の方がいいんじゃないか?」
フローラは最終的にはオレの後ろの方向へ指差すが最初に指差した方向へと顔を向ける
「あっそっちは違うよ」
「いいんだ。オレは速く強くならなきゃならないんだ」
オレはそれだけ言うとダンジョンの方へ走り出した
フローラをおいていった。なぜなら…オレは弱いからだ。どうしようもなく弱い、もう目の前で大切な人が死ぬのをただ見ているなんて出来ない
オレは弱い、守れないから連れては行けない
「じゃあ~な。」
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