第28話魔物の群れ
オレはミラが野暮用でいないことを知り、暇を潰すべく外にでるとバルムンクがそこにいた。
久しぶりにバルムンクと話をすると店を開いたというのでバルムンクの案内のもとマジックショップに行き、あまり繁盛していないことを知る。
そんな状態の店の為に一肌脱ぐことにした。
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ファガロスの町、冒険者ギルドの休憩室と呼ばれる所にいる。目の前には町の近くでアイアンゴーレムによって殺されかけていた冒険者パーティーのリーダー、ガムロがいる。
オレとガムロは休憩室のイスに座る、オレは早速、本題に入ることにした。
「なぁー少し頼みたいことがあるんだがいいか?」
「構わんぞ、言ってくれ」
ガムロは一切の迷いなくオレの頼みを聞き入れてくれようとする。
「即決かよ!」
「助けられた身、力になれるならば力になるといったであろう?」
「お、おう。ありがとう」
ガムロはさも当たり前かのようにいう姿に少しだけ圧倒された、ガムロの男気は物凄く格好いいと思えた。
「じゃあさ、このアイテム達を使って効果を広めてくれないか?」
オレはバルムンクから預かったマジックアイテム達をバッグから出していく。
MP回復ポーション、身代わりの腕輪、炎剣 ジャービルを机の上に置いていく。
「これは?」
「これは新しく出来たマジックアイテムショップの商品達だ。
ソコの店の店主はオレの友達だから助けてやりたくてな」
「そうか。分かった! それくらいのことならば協力しよう」
「おぉー! ありがとう!!」
よし! これで大丈夫だろう。
この街で英雄とまで呼ばれている冒険者チームのリーダーが宣伝すればかなりの効果があるだろう。
「宣伝するのは良いが、正確な効果を教えてくれないか?」
「ん? いいぞ」
待てよ………正確な効果ってオレ、バルムンクからしか効果聞いてないけど本当なんだろうか、あんまり覚えてないし………。
まぁーいいや。
魔眼を使うか、オレは魔眼を机の上に乗せたマジックアイテム達に向ける。
《アイテム名 MP回復ポーション
効果:MPを300回復する
追加効果:MPの最大値を3増加させる
獲得可能能力、MP小増加》
《アイテム名 身代わりの腕輪
効果:致命傷の攻撃を1度だけ無効化する
獲得可能能力、致命傷無効化(1)》
《アイテム名 炎剣 ジャービル
効果:念じることによって炎を纏ったり、放出することが可能
獲得可能能力、火炎創造》
おっと………ちょっと効果を調べようとしたら能力がコピー出来ることが発覚した、それもそうか、ステイタスカードしかりだ。
まぁーとりあえず3つコピーしとくか。
「えぇ~とこのポーションがMPを300回復しMPの最大値を3増加させてくれるポーション
次に致命傷を1度だけ無効化してくれる腕輪
最後に火炎魔法がMPなしで使える炎剣 ジャービルだ」
「なんだその! 値段は?」
値段? そういえば聞いてないな。
どうしよう適当な値段でも言っとく………わけにもいかねぇーよな。
あっでもポーションは相場と同じ位と言ってたな。
「ポーションは相場と同じみたいだぞ。あとは知らないから自分で店に行って確かめてくれ」
「この性能で相場と同じだと! その店を案内してくれないか? 今すぐ行きたい」
案内……ここまで来るのに迷った奴にいうセリフじゃないな、まぁ~迷ったことは知らないわけではあるが。
「あぁ~ごめん、オレ知らない」
「なんだと! ではどうやってここまできた?」
「いやぁ~道に迷って適当に走ったら大通りに出たから道を聞いた」
「なかなか運のいいやつだな。この街は複雑な作りになっていてな、初めての奴は遭難すらあり得る」
オレは驚きで前のめりになってしまう、遭難!? なんでそんな町作りにしてしまったんだよ町長。
「なんで!? そのせいで迷っちゃったんだけど!」
「仕方のないことなのだよ。町長が大のダンジョン好きだから自分の町すら改造していったらしい
まぁ~反対意見もあり迷路にする地域は決まっているがな」
オレはイスに座り直し体制を元に戻しガムロと対面する、自分の好きなものに皆を巻き込むとはなかなか変わった町長だな。
「ふ~ん………色々とあるんだな。それより他のメンバーはどうした?」
「ん? アイシャとサリアは一緒に風呂に行っている」
風呂? この町にもあるのか。こっちの異世界ではなかなか風呂がなく大体は水浴びで終わらせるらしいが女性陣はやはり風呂の方が比率が多いらしい。
風呂がある町というのはなかなか治安がいい町と言える、ゆっくりと風呂に入れるということは一定の長時間風呂に入り装備を外さなければならない。
つまり無防備になっている時間が長いほど命の危険が多いということだ。
「そうか。じゃーオレは行くからこの商品達を宣伝してくれ」
「分かった。オレの名、バラダインに誓って全力を尽くさせて貰おう」
ガムロはイスから立ち上がり貴族のような動きで胸に手のひらを軽く当て綺麗なお辞儀をする。
その一連の動きは王を前にした貴族のようで笑ってしまった、ガムロのようなゴリムチの男がやっても違和感がありすぎるだけだ。
「違和感がすげぇーぞ。」
「そうか? これでも伯爵家の三男なのだぞ」
ここで明かされる新事実!
ガムロさんは伯爵家の三男だそうです!!
ぜってぇー嘘だろ!そんなゴリムチがなにを。
「冗談だろ? もし伯爵家の人間なら冒険者なんて危険な仕事をしてる」
「酷いな! 貴族が全員金を持っている訳じゃないのだぞ! いやオレの家は確かに金を持っているが家督は長男が継いだ。次男ならば予備として家に置かれるが三男のオレは家を出されるのが当たり前だ」
おっとー嘘だと思ったが本当のようだ、それに良くも知らないくせに嫌なことを言ってしまったな。
「えっマジなの!? いや、疑ってごめん
それに色々とごめん」
「気にするな。慣れて………」
《カンカンカンサンカンカンカン》
オレとガムロが話している最中に町の門の近くから鐘をならす音が町中に響き渡った。
オレはなんの音が分かんないけどガムロの表情は険しいものへと変わっていく。
「なんの音なんだ!?」
「魔族達の襲撃だ。オレはさっそく向かうがお前はどうする?」
「もちろん戦うよ! 案内してくれ」
門番に入ることを拒否されたりしたがこの街には恩を感じている、今助けるために動かないでどうする。
まぁーそれは建前として本当は進化してどれほど動けるようになったか試したくてウズウズしている。
「お前がいれば大丈夫だろう。こっちだ来てくれ」
オレはガムロに案内されるがまま道を進んでいき門の前まで来る。
《冒険者の皆さんは町の門まで大至急集まってください》
町の至るところからマジックアイテムにより大きくなった声が町中に響き渡った。
続々と冒険者達が集まり始め、魔族と戦うべく装備を整えている。
「えっこれだけ人数がいたのか!」
冒険者の数をざっと数えても60人はいた、それだけの数の冒険者がいれば大抵のことならば解決できるのではないだろうか。
「数は多くても質がな……。ランクが低い奴らもいる」
「そうなのか、でもお前がいれば何とかなるんじゃ?」
「いや、そうでもないさ。お前のような若い奴に助けてもらったんだ、まだまださ」
いやいや、まだまだと言っても俺なんて人間じゃないし、種族が強いだけでオレは大したことないだろう……たぶん。
「魔族達ってどれくらい強いんだ?」
「一体一体は大したことないが、数が尋常では無いんだ」
冒険者は皆、不安そうな顔になり。
自分の中の不安や恐怖、恐れと戦い何とかこの場にいるのだろう
皆がピリピリしていて雰囲気が張り詰めていた。
「数っていったいどれくらいだ?」
「前回は300だった。それに党則された動きで俺達を翻弄するから厄介なんだ」
300! 俺達の約5倍じゃないか!! それに党則された動きって圧倒的に不利じゃないか、それは皆、緊張するもの頷ける。
「分からない、俺達のチームで倒せて100位だからお前達のチームなら200くらいは倒せるんじゃ………いや何でもない! これは俺達の町の問題だお前達に頼りっきりってのも筋違いだな。忘れてくれ」
「ミラやリーズ、アイリスは来るか分かんないけどオレがその分がんばるさ」
ミラならば200どころか全滅すら数秒で終わってしまうだろう。
あの魔法があれば………ミラってマジでチート。
「まぁー怪我人が出ないように頑張ろうぜ」
「あぁーそれが最善だな。前回は30人もの犠牲者がでてしまった」
30人………多くねぇーか! そんなにつえーのか。気を引き閉めないと危ないな。
「おぉ~リクトも来たのか。」
遠くからミラが話しかけてきた。隣にはリーズ、アイリス後ろにはアイシャとサリアがいた。
そのメンツで何をしてたんだよ、いや待てよ………ガムロによるとアイシャとサリアは風呂に行ったって言ってたよな。
「おう! それより野暮用ってまさか……風呂か!?」
「うむ、そこでたまたまアイシャに会ってな。一緒に風呂に浸かったのじゃ」
おいおいおい! オレを一人にして皆で仲良くお風呂かよ!!
オレってハブられてる? ………つらい。
まぁ~一緒に行ったとしても別々になるのは必須だが。
3人は皆、髪を濡らし、頬は紅潮させていた。
「リクト様はどうしていたのですか?」
「ん? あ、あぁーそうだ! バルムンクに会ったんだよ。それで色々と相談されて動いていたんだ」
「リクトさんに相談ですか?」
アイリスの茶色のくりっとした瞳が俺の顔を見上げている、オレはアイリスの可愛さに心うたれそうになる。
「まぁ~いろいろとな。それよりアイリスも戦うのか?」
「もちろんです。リクトさんが戦っているのに休んでなんかいられませんよ!」
アイリスは両手を上下にブンブンという効果音が似合いそうなほどに振っている。
「俺達は右に行くからお前たちは左の方の奴らをやってくれ」
「分かった。死ぬなよ」
「あぁーお前もな」
ガムロはアイシャ、サリアをつれて右側に走っていってしまった
俺たちはガムロに言われた通りに左側へと向かい門が開くのを待った。
「あの魔法って今回使えるのか?」
「いや、あの魔法は使わん方がいいじゃろう。
目立ちすぎる上に闇の力だ。見られれば面倒なことになるのは避けられないだろう」
オレがあの魔法を使ってくれたらソッコーで終わるという淡い希望を抱き質問するが完璧な正論で返答された。
ミラも後先考えずにやるタイプかと思ったが意外と考えていることに嬉しくも思うと同時に驚いてしまう。
《魔族が来ました。門を開けます、準備してください》
「来たぞ。オレは進化した体を試したいからアイリスはミラに守って貰え。オレの近くより絶対安全だから」
「分かりました」
門の扉は鈍い音と共にゆっくりと開いていく、遠くには広く散会した魔族達が土煙をあげながら門へと突撃していた。
大きな体の魔族、小さく素早い魔族、体が獣のような魔族といった具合に皆が皆バラバラの種族が集まり群れをなしているようだ
どうして、だろう?………ん? なんか、デジャブか。
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