第17話新しい武器と反応

 町民の賑やかな声、子供達の無邪気な笑顔、オレ達を照らす太陽すらもオレ達を歓迎してくれているような感覚に陥ってしまった。

 指輪の効果は凄まじく人外特有のオーラ的なものを見事に消している。

 町民から見たら俺たちは人間にしか見えないのだろう。

 指輪をつける前まではなにもしてないのに睨まれ、殴られ、恐れられた。子供達からは幼さの残る罵声と共に石を投げてくることもあった、人間の町は魔族にとってはかなり居づらい場所であった。

 元人間としては人間の醜い部分が現れているかのようで見るに絶えなかった。


「よー兄ちゃん! 綺麗な女性ばかり連れて羨ましいね。綺麗な女性は危ないことが多いよ。護身用のナイフは必用ですよ。どうですか?」


 褐色の肌のおっちゃんがナイフを3本持ちながら話しかけてくる

 護身用のナイフかー正直ミラとリーズには必用ないな、いざとなったらこの町ごと吹き飛ばせそうだし。

 だけど、アイリスには持たせた方がいいかもな………う~ん、でもミラに奢って貰うのも申し訳ないし………また今度で大丈夫だろう。

 アイリスもそこそこ強くなっているし逃げることくらいできるだろう。

 それにアイリスには気配察知の能力スキルもあるからそこらの冒険者に不意打ちは不可能だろう。


「いや今はいいです。ではまたの機会に」


「そうかい。何か武器を買うときはウチで買っとくれよ」


 おっちゃんは爽やかな笑顔で宣伝してくる。 

 最近よく思うのだが異世界の人達ってなぜ美形が多いのだろうか。

 この地域だけ多いのかもしれないがそれにしてもブサイクを見たことがない、特にキレイなのがエルフだ。

 テンプレどおりに美しく見惚れることもよくあるらしい、だがエルフは異性に近づこうとしない。


「なぁ~ミラ、ダンジョンで疲れているから早めに休みたいんだけど。宿屋に案内してくれないか?」


「あ、あぁー」


 あっダメだミラは完全に放心状態になっている、まぁー無理もないだろう。

 今まで無言で睨まれていたのが親切に話しかけてくるんだからな

 あまりの変化に頭が追い付いていないのだろう。


「しょうがない、リーズ案内して....ダメか」


 リーズは一見すると平常を装っているが視線が完全に定まっていない。

 アイリスは動揺することなくオレにくっついたまんまだ、そろそろ離れてくれないとミラが怖いんだよな。

 たまにすごい睨んでくるし。 


「ミラとリーズはこっち来て落ち着いてくれ」


 オレはミラとリーズを門の壁に寄りかからせ落ち着くまで待つ。


「すまんな。リクト、あまりの変化に動揺していたようじゃ」


 どうやらミラは平常心を取り戻したようだ。


「気にするな。それより早く案内してくれないか? 眠気がやばくてな」


「わかった。ついてこい」


 ミラはオレ達を宿屋へ案内してくれる、左へ右へと曲がっていく。

 たまに知ってる景色もあった、最初に転移していた場所。

 大男達に襲われた場所、魔眼球を買った場所、装備を揃えた店、そして最後に着いたのは最後に泊まった宿屋だ。


「2部屋空いておるか?」


 ミラは勢いよく宿屋の扉をあける。

 おい、待てよ!、魔族としてこの宿を利用したんだからバレるんじゃないか!

 あぁ~、終わったな人間としての生活。


「いらっしゃい! ってまだ子供じゃないか家に帰んな。親が心配するだろ」


 あれ? バレてないな。宿屋のおばちゃん忘れたのかな? それとも指輪の効果かな? まぁーバレてないならいいか。


「なんじゃと! 妾は既に、にひゃ....んん~」


 オレはヤバイと思いできるだけ早くミラの口を塞ぐ、200歳とか言ったらソッコー魔族だとバレてしまう。


「何言ってる、せっかくバレなかったのに自分からバラしてどうする!」


「………すまん」


 オレはミラの耳元で小声で注意する、ミラは自分のやったことを理解し冷や汗を流している………本当に危なかった。

 オレ達を知らなかった人達に言っても冗談だと思われるかも知れないがここの宿屋は以前魔族として入っているからかなり危なかった。


「すいません。コイツこう見えてオレより年上なんすよ。泊めてやってくれないか?」


「えっ!……本当かい?……………まぁ~いいよ、問題は勘弁だよ。

 部屋は3号室と4号室を使ってちょうだい

 風呂も入ることができるけど追加料金がいるよ」


 風呂か! こちらの世界でもあったのか、日本人として是非とも入りたい。


「入りたいです」


 今までずっと黙っていたアイリスがオレの裾を上目使い引っ張って言ってくる。

 そのコンボは反則だろ! かわいいな。抱き締めたくなるよ………だがミラの目が怖いからやめておこう。


「そうか、ならば風呂も頼む」


「あいよ。飯は食堂で食べるのと部屋に持っていくのどっちがいい?」


 うーん........正直どっちでもいいな、一応みんなの意見を聞いた方がいいかもな。


「どっちがいい?」


「私はどちらでも構いません」


「どっちでもいい」


「私はみんなで部屋で食べたいです」


 うーんと3人の意見を統合すると....。

 リーズとミラはどちらでもいい、アイリスはみんなで部屋で食べたい………ということは必然的にみんなで部屋で食べることになりそうだな。


「じゃー部屋に運ぶでいいね?」


 宿屋のおばちゃんはこちら側の意思を分かってくれているな、ありがたい、話す手間が省けた。


「場所は奥の通路を進んでくれれば分かるよ」


「わかった。料金はいくらになる?」


 ミラは空間魔法でしまってある金貨の入った袋を取り出す、もちろん店のおばちゃんに見えないように背中側で取り出した。


「そうさね、4人だから金貨3枚で1週間ってところだね」


 ミラは出した袋から金貨を3枚取り出しおばちゃんに手渡す


「はいよ! じゃーこれが部屋の鍵だよ。一応言っとくけどめんどうごとは起こさんでくれよ」


 異世界での通貨は思ったほど高くない。

 金貨は10000円くらい。

 銀貨は1000円くらい。

 銅貨は100円くらいだ。

 金貨以上に高価な硬貨もあるらしいが貴族達が取り引きで使用するくらいにしか使われないからあまり出回ってはいない、宿屋の料金は4人で30000円と良心的価格だった。


「じゃー部屋に行くか」


「早くご飯が食べたいです。」


 アイリスはすぐにご飯が食べたいようだな、オレにくっついたままのアイリスが可愛らしい声を出す。


「じゃー先に飯にするか。おばちゃんご飯部屋に運んでください」


「あいよ! 少し時間がかかるから待ってくれよ」


 オレ達は部屋の前まで移動した、オレは3号室に入ろうとするが後ろからミラとアイリスが無言で入ろうとしてくる。


「ん? 3号室の方がいいのか? じゃーオレは4号室にするか」


「なんだ、私と一緒じゃないのか!?」


 ミラはオレと同じ部屋に入ろうとしていた、いや、まてよ。男女が同じ部屋で寝るのはヤバイだろ。

 前は一部屋しか空いてなかったからしょうがないにしても今回は2部屋空いているんだから男女で別れるべきだろう。

 それにこんな可愛いミラが隣で寝てたら意識して眠れない。


「ここは男女で別れるべきだと思う」


 オレはミラに部屋は別れた方がいいと言うが、ミラの表情は悲しいものへと次第に変わっていき、オレの意見が変わりそうになる。

 ミラに奢って貰っているのになぜオレが我が儘を言っている? それに本人も了承しているのだし、問題があるのか?………ないんじゃないか? と、そんなことを考えているとリーズの意見は常識的だった。


「そうですよ。ミラ様! 異性と同じ部屋で寝るなどありえません。リクトさん、ならば大丈夫でしょうが………色々とまずいことがあるのです。お控えください。」


 確かにオレはあり得ないよ。

 仮にそんなことしたら殺されそうだし、マジで。


「それにアイリスさん、あなたもです!

 確かに私達と共に過ごした時間が少ないとはいえリクト様にばかりくっついていると嫌われてしまいますよ。」


 リーズさんの言葉にアイリスはビクッとして不安そうにオレを見上げてくる。

 そんなことないがこんなにくっつかれるとアイリスの大きな胸があたって気まずい。


「さぁー二人ともこちらに。」


 リーズは二人の腕を引っ張り4号室に入っていった。

 ミラは最後まで名残惜しそうにオレを見ていたがリーズに部屋に引きずり込まれていった。

 オレは1人で3号室のドアを開けて部屋に入る。


「うわ! 広いな」


 前回泊まった部屋よりかなり広いな作りになっておりベットは4つあり大人数でも平気なような作りになっていた。

 1人で使うのは寂しいが今さら寂しいとは言えない、オレはベットに横になり暇を潰す。

 隣からリーズとミラの声が聴こえてくる。


 《ミラ様はリクト様とどうなりたいのですか? 過度な接触は嫌われてしまいますよ。》


 《分かっておる、だが久しぶりの再会だったのじゃ浮かれてもしょうがないではないか》


 《そうかもしれませんが………お控えください》


 パートナー(眷族)には既になっているはずだぞ、どういうことだ? オレは1人で考えるが分からなかった。


 《コンコン》


 ドアが2回ノックされた、もしかして話を聞いていたのかバレたか?


「ご飯を持ってきたよ。あけとくれ」


「あっはい」


 オレは急いでベットから、降り扉をあける、目の前にはスープとパン、脂身が多い焼いた肉が乗ったお盆を持つおばちゃんがたっていた。

 スープのいい香りが漂ってきた。


「野菜のスープにエラルドウルフのステーキだよ」


「おぉーうまそぉーありがとな。おばちゃん」


「冷めないうちに食べちゃいなよ」


 そう言うとおばちゃんは隣の部屋に料理を運び下に降りていった

 隣から3人が自分の料理を運び部屋に入ってくる。


「一緒に食べるぞぉー」


「そうだな、みんなで食べた方が美味しいからな」


 四人で談笑しつつご飯を食べた、オレとアイリスは久しぶりの料理されたご飯に興奮しつつ食べた。

 ご飯を食べ終わると風呂に入ることがため3号室に戻っていく。


「じゃーオレも入るか」


 オレは部屋の壁際にあるドアを開けて浴室に入る、日本人としては風呂は楽しみでしかない。

 テンションが上がり急いで服を脱ぐ、正直疲れた体を早く風呂で癒したい。


「思ったよりスゲーじゃん」


 服を全て脱ぎ入った浴室は広くキレイだった。

 オレが想像していたのは石を雑にくり貫いた用な物だと思っていたがあった浴槽は金属で作られており見事な物だった。

 元の世界の物と比べると数段落ちるがなかなかの物だろう。


 隣の部屋の浴室から女性陣の声が漏れてくる。


 《おぉーリーズしばらく見ないうちに大きくなったのぉー》


 《どこ見てるんですか! 隣にリクト様がいるのですから自重してください》


 《なんなら隣の部屋に転移するか?》


 《私はリクトさんの背中を流しに行きたいです》


 ()


 良かった二人揃って止めてくれた、ってそんな場合じゃねぇーーーなに? ここの壁ってそんなに薄いの? もしかしたら覗き穴とかないよね! オレは見ないよ!まだ死にたくない。

 オレは隣に気付かれないように浴槽から出てベットに寝る。

 あ、、あぁー風呂も入り疲れが溶け出している用な気持ちよさに襲われる。

 オレはその気持ちよさのまま眠りについた。

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