第9話魔力枯渇

じめじめとした温度、カビ臭い空気、薄暗く何かが蠢く気配という様々な悪環境がリクトたちを苦しめた。


「あの! リクトさん、どうしたらいいでしょうか?」


アイリスはいきなりのことに戸惑いを隠せない声で聞いてきた、尻尾は垂れ下がり、耳はピクピクと世話しなく動いていた。


「大丈夫だ。魔物が来てもオレが戦うからアイリスは援護を頼む」


オレはアイリスの不安を出来るだけ取り除こうと頭を撫でてやった、勿論周りの警戒しながらだ。



「出口を探して歩き回るより、生きていく上での必需品を集めるぞ。まずは飯の確保だ」


考えてみると飯を食べてない

アイリスはお腹が減っているようには見えないが強がっているのだろう


「わかりました。では魔物の位置探知はお任せください。獣人は鼻がいいので魔物の位置は大体は把握できますので」


アイリスは小さな鼻をひくひくさせながら言った

可愛いな。そして頼もしい。


「ありがとう。任せる、魔獣の位置は分かるか?」


「はい。こちらです」


なぜかアイリスはいきいきとしていた、自分が頼られているのがうれしいのだろうか? そんなアイリスの後を警戒しながら着いていく。

数分歩くとアイリスが立ち止まり、指差す方向には古い装備をつけた小さな人型の魔獣が1匹と猪の用な魔獣が2匹いた。

オレは新しいスキル、ステイタス閲覧と魔眼を同時に魔物達に使ってみた。


《個体名称:ゴブリン

魔物ランク F~E

注意点、肉は食べられないこともないが非常に不味い》


《個体名称:フールピック

魔物ランク F

注意点 皮膚は少し硬いが簡単に倒せる。肉は大変美味》


ゴブリン ステイタス平均20~30

フールピック ステイタス平均20~30


どうやらステイタス閲覧は魔物に使用した場合、平均がわかるみたいだ、自分はしっかりと数値が分かるのだが。


まぁ~でも、よし飯ゲットだな。

ステイタス的にはアイリスでも余裕だろう。


「アイリス2匹いる魔獣の1匹を任せても大丈夫か?」


「わかりました。」


オレはアイリスに予備のナイフを1本渡した、オレは気付かれないように近ずきフールピックの頭にナイフを突き刺した。

フールピックは一瞬で絶命した、こちらの様子にゴブリンと猪の魔獣1匹が襲い掛かってきた、オレはフールピックの鈍い突進を軽々と避ける。


「アイリス! フールピックは任せた」


ゴブリンは動きが遅く、何かを叫びながら走ってきた、何か声らしき物を出しているが言葉ではなく威嚇している声だった。

オレはゴブリンの鈍重な剣を避け、後ろに回り込む。

ゴブリンは抵抗しようとしていたがすぐさまナイフで首を切る、運よく頸動脈が切れたみたいだ。

ものすごい、いきおいで血が吹き出た、返り血を浴びないようにすぐに離れたが裾に血がついてしまった。


「アイリスそっちは終わったか?」


「はい。終わりました」


アイリスに加勢しようと振り返るがアイリスは既にフールピックの解体を始めようとしていたところだった。

意外と強いな………。


「どうだった? 初戦は」


「嫌………ですね」


そうだな。さっきだってゴブリンは殺されまいと最後まで抵抗していたからな、辛いが強くなる為には仕方ない。


「確かに辛いが仕方ないことだからな」


「そうですね」


アイリスとオレは少しうつ向いてしまった、命を奪う行為の罪が心に突き刺さった気がした。

だが仕方のないことだと折り合いを付けないと罪悪感で押し潰されるかも。


「気を取り直して、飯にしよう」


オレはアイリスが切り分けてくれたフールピックの肉を焼こうとしたが木がなく火が作れなかった。どうしよう?


「どうしましたか?リクトさん」


火がなくどうしようか考えていると、アイリスは生のまま肉にかぶり付こうとしていた。


「ちょっと待て。生だぞ?」


「火がないのにどうやって加熱するのです? リクトさん

それに獣人ですから生でも平均ですよ?」


アイリスは少し首を傾げこちらを見ていた、可愛いなぁー、、、じゃない。どうしよう?

火、火、火?ファイヤー? ん? ファイヤーボール!!!

オレは


「ちょっと待て。肉をそこにおいてくれアイリス」


「なぜです?」


「オレに考えがあるからだ」


と言いながらもオレの指差す所に肉を置いた。


「ファイヤーボール!」


アイリスは口をあけて驚く、オレは肉に向かってファイヤーボールを飛ばしたが魔力を込めすぎたのか肉は一瞬で灰になってしまった。


「火力が強かったか?」


「リクトさんは魔法を使えるのですか?」


アイリスは驚いていた、アイリスは感情の変化により耳や尻尾が動くようだ、可愛いな。


「あー魔眼と個体能力で敵のスキルをコピーできるんだ。

それで火炎魔法をコピーしたんだ」


「それって高等能力じゃないですか!!! それを二つも!」


高等能力というのがどんなものか知らないが便利な能力なのは確かだ。

アイリスに肉を切り分けてもらってまたファイヤーボールを使かう、次は消費魔力をかなり減らして。


「ファイヤーボール」


小さめな炎が肉に飛んでいき肉を加熱した、しっかりと焼けていた。

表面は少し焦げ目がついたぐらいで中は半分レアなぐらいになる。


「ほら、アイリス」


オレは焼けた肉をアイリスに譲り、次の肉を焼こうとする。


「そ、そんなリクトさんが先にお召し上がりください」


「敬語禁止だって」


「あ、はい.....私が先に食べていいの?」


アイリスは戸惑い敬語を使わないようにしてくれた、従順な子って可愛いな。


「しっかりと食べろよ」


「ありがとうござ.....ありがとう」


相当無理してるけど今後の為ならしょうがない、でもう~ん自分の考えを押し付けてる感覚があって罪悪感が………。


「気にするな」


オレはそう言うとどんどん肉を焼いていく。

MPの消費を考えず魔法を乱射してしまった、それが原因て目眩がする。

一瞬自分の身に起きた異常を知ろうと、自分に向けてステイタス閲覧のスキルを使った。



名 ミヤマ リクト

称号 魔眼保持者

レベル 16


HP 460

MP 6/752


ATK 216(+20)

DEF 187(+30)

INT 193

RES 211

HIT 198

SPD 283(10)


ヤバイなMPの消費しすぎたな、ステイタスカードに魔眼を使い、新スキル、ステイタス閲覧のスキルを使い、ファイヤーボールを使いMPは底をついてしまった。


「すまん。MPを使い過ぎて動けねぇー」


体はものすごい倦怠感だ、頭痛や目眩を通り越すとこうなるのか

オレはその場に座り込みアイリスに向かって呻いた。


「大丈夫ですか!? リクトさん」


「け、敬語はきん..........。」


最後には意識がなくなってしまった、意識がない中アイリスが戸惑う感覚があった。

アイリスはオレのことを看病してくれたらしい、目がさめるとアイリスはオレの横で座りながら寝ていた、目の周りは赤くなっている。泣いたのだろうか?


「アイリス?」


アイリスはオレの声を聞きすぐに目を覚ます。


「大丈夫でしたか? リクトさん。痛い所とか辛い所とかありませんか?」


アイリスはすごい早口でオレのことを捲し立てた。


「あ、あぁーもう大丈夫だ」


「そ、そうでしたか。安心しました」


まだ少し目眩がするが大丈夫だろう。

一応、念のためステイタス閲覧のスキルでステイタスを見ておくことにした。




名 ミヤマ リクト

称号 魔眼保持者

レベル 16


HP 460

MP 389/752


ATK 216(+20)

DEF 187(+30)

INT 193

RES 211

HIT 198

SPD 283(10)


良かった回復しているようだ。


「次からはMPの消費は考えてくださいね」


アイリスは本気で心配してくれたのだろう、ほぅーっと胸を撫で下ろしていた。


「は、はい」


いきなりアイリスが笑いだした、何かあったのか? と心配したが数分笑うとおさまった。


「なんかいつもと逆ですね。いつもは気にかけてくれてますけど今回は私が気にかけましたね。フフフ」


アイリスは笑顔のまま言った。


「確かにそうだな。お互いに助け合う関係ってことだな」


オレはアイリスとさらに打ち解けられた気がする。


「よし。一階層の魔物は弱かったし。どんどん行くか」


「あくまで慎重に、ですよ」


アイリスは笑いながら言った、さすがに同じ失敗をこんな短時間に思ってはいないだろうが一応、忠告された。


「わかってるよ。よし!行くか」


宣言どおりどんどんと奥に進むんで行った、途中でゴブリンやフールピック達と出会い倒しておいた。

その倒したゴブリンの中の1匹が錆びたメイスを持っていたで倒した後に回収しておいた、回収したメイスはアイリスに装備させ、アイリスの攻撃力を底上げしておく。

歩き回ること数時間で階段を発見し、上に行く階段ではなく下に降りる、二階層へと続いているのは確かだ。


「どうするアイリス? 降りるか?」


オレは階段をしっかりと見定めているアイリスに聞いた。


「降りた方がいいと思います。奥に進むとミラ様が迎えに来てくれるかもしれません。例えば五階層についた瞬間に転移させてくれるみたいな」


「う~ん.....来てくれるか?」


「はい………たぶん」


ミラは可愛いし性格もいいだがやり方が古い、いくら鍛える為とはいえ森に放置するのはダメだな。


「よし! アイリス降りるぞ」



オレ達は二階層へ向けて足を進めた。

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