サンゴの町の物語

海辺野夏雲

第1話 故郷の海

 この海の彼方には、何があるのだろうか…。大きな黒い岩の上に立ち、夏の終わりの東シナ海の水平線に隠れてしまいそうな真っ赤な太陽を見つめていると、そんな幻想に駆られてしまう。太陽からは、眩い光の道が足元まで伸びている。打ち寄せる波の音は昔ながらに絶え間なく続き、ほのかな磯の香を運んでくる。この場所で佇んでいると、島で過ごした日々が鮮やかに蘇る。

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