満州国のゴジラ

@konhide

第一章

日本に原爆が落ち、無条件降伏を行ったその日。


しかし満州国の満州映画理事・甘粕正彦は、「私は降伏しない」と宣言した。

「大東亜共栄圏の理念を達成し、そして日本を救うためにも、満州国を維持する」


ソ連、アメリカ、中国共産党に対し、関東軍と協力し、満州国として戦いを続けた。


「甘粕理事、しかし戦況はギリギリの状態だ。何か打開策はないか?」

と、関東軍の偉い人は言う。

「うむ……、満州映画で何かできるうまいプロパガンダはあるだろうか?」と悩む甘粕。「満州映画のレベルははっきりいって低い。満州国民を鼓舞するものはなかなか作れない……」

「それならどうだ? 日本から若手で気鋭の映画監督を呼んで、映画を作らせてみたら?」

「そんな人間がいるのか?」

「いる。東宝で『姿三四郎』という映画を作った黒澤明というまだ30代半ばの男だ」

「おおっ!」

甘粕も『姿三四郎』は見ており、その実力のほどは十分に知っていた。


というわけで、甘粕は敗戦にあえぐ日本から満州に黒澤を呼んだ。


黒澤は言う。

「甘粕さん、満州全体を活気づかせ……いや、世界全体に満州国の力を見せつける映画をぼくは作りたい。ソ連やアメリカが恐れおののくようなレベルの作品を」

「うむ」

「日本の映画人は、ディズニー映画や『風と共に去りぬ』を原爆を落とされる前に見て、日本の敗戦を確信していた。しかし逆に言えば、ものすごい映画を満州が作ることができれば、全世界に満州国のレベルを見せつけてやれるということだ」

「うむ」

「だが、ぼく一人では、そんな凄い企画を立ち上げるのは無理だ……。そこで三人、呼んでほしい人がいる」

「誰だ?」

「田中友幸というプロデューサーと、本多猪四郎という今は戦線にいる、ぼくの兄弟弟子にあたる助監督だ。そして後は特撮の円谷英二という人だ」

「よし呼ぼう」


ということで、日本から満州にこの三人を呼び、黒澤も含め企画検討に入った。

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