#19 Wake Up

 あれ…何だ?


 なんだか、妙に額が涼しい。

 そして、詰まった鼻孔を通り抜ける冷たい香りがある。


 すごく、気持ちがいい。

 でも、周りが騒がしいな。

 せっかくの気分が台無しだ。


 何だよ全く。誰だよ?


 ゆっくりと視界が開け、意識と共に明瞭になっていく。


 まず目に飛び込んできたのは揺れている白銀の長い髪。

 流れる砂漠の海を連想させるシルクのビロード。

 

 続いて月の様に蒼い目が、僕を心配そうに覗き込んでいる。

 不思議な月面の引力に惹かれたのか、僕は瞳を逸らすことが出来ない。


 あれ? 君は?

 以前、何処かでお会いしましたか?


 覚束ない記憶の波が怒涛に押し寄せてくる。

 遠く離れた星と星とが繋がって、恣意的な星座を作るように。

 過去の欠片きおくが集まって一人の人物とそれに付随する経験を形成する。


 そうだ。君は…、あの時聞いたは―――


「シャーロット?」


 僕の目の前にいる少女はあの日あの時のままの姿。

 間違い無く、僕達が五年前に出会って別れた、異国の空気を持つ少女だった。

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