31、地下の列車

 秘密の通路に入るとすぐに階段があった。

 階段は長く踊り場が二つ設けられるほど深かった。ランタンを照らしながら、慎重に階段を降りると、再び通路が現れた。

 ミッシェルたちは、ランタンを照らしながらその通路を進んだ。

 通路は意外にも綺麗に舗装され、壁の作りも丁寧だった。

 途中、ランタンを引っ掛ける為のフックを見かけるものの、肝心のランタンを掛けた様子はない。

 恐らく、ここを施工したのは普通の人間だったのだろう。作業の為の灯りが必要だったに違いない。


「ねえ、コール。どこまで続いてると思う?」

 先頭を行くコールにミッシェルが聞いた。

「出口に出くわすまでだ」

「ちゃんと答えてよ」

「じゃあ答えてやる。わからない」

「それって、ちゃんと答えてない」

「子供か。お前は」

「ふたりとも少々、声を控えた方がよろしいですよ。連中は聴力も高い」

 最後尾を歩くカッシング教授が言った。

「そうだぞ、ミッシェル」

「わたし? 冗談でしょ? 声が大きいのはコールの方じゃない」

「俺の声は控えめだ。それに上品」

「なにそれ」

「しっ……」

 コールが歩みを止めた。

 察したミッシェルが、銃の撃鉄を降ろす。

「何?」

「冷たい空気が流れてくる。何かある」

 ランタンをかざすと扉が見えた。

 その扉を僅かに押して隙間を作ると音が聞こえた。話し声や、物音だ。

 そっと中を覗いてみるとグレーの色の南軍制服を着た兵士たちが何やら作業をしていた。スナイドル銃やウィンチェスターライフルを持った兵隊たちも何人かいる。作業中の兵隊も皆、ガンベルトをしている。

 そして中には機関車と数両の列車が置かれていた。それを動かすレールも据え付けられている。

「驚いたな。線路と列車だぜ」

「こいつが、鉄道会社の路線に勝手に乗り入れしてるってわけね」

「変わった形だな。なんて機関車だ?」

「機関車の名前なんて知らないよ。それより、どうするか考えてよね」

「そうだな……」

「陽動作戦なんてのはどうですかな」

 教授が口を挟んだ。

「いいね。で、何かいい考えが?」

「あれを見てください」

 教授の指差す方向に石炭を積んだ貨車があった。

「石炭か」

「ダイナマイトはまだ残っていますよ」

 コールとカッシング教授は、顔を見合わせるとニヤリとした。



 荷物の積み込みをしていた兵隊のひとりが物音に気がついた。

 音は、切り離したあった石炭を積んだ車両の方だった。

 見ると何かが小さな火花を散らせている。煙の臭いもする。

「どうした?」

 異変に気づいた兵隊に別の兵隊が声をかけた。

「いや、何かが向こうの方で……」

 そう言いかけたときだった。

 石炭を積んだ車両が爆発した!

 火のついた石炭が四方に飛び散った。


 


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