27、暗闇の撃ち合い

 街では生き残ったヤンガー一味と追跡隊が吸血鬼に追い詰められていた。

 銃声と叫び声が夜の闇に響いていた。

 ランタンを持った者が襲われ、灯りが消えると追跡隊と強盗団も視界を奪われる。

 パニック状態の中、皆、散り散りになった。

「くそっ!」

 シモンは、目の前に現れた吸血鬼の頭めがけて銃を撃った。

 頭を吹き飛ばされ倒れた吸血鬼に向かってさらに銃弾を打ち込み続けるシモンのテンガロンハットを銃弾かすめた。

 身を伏せるシモンは、撃った相手を探した。

 そこには黒ずくめのガンマンが立っていた。追跡隊のビショップだ。

「よせ! そんなことしてる場合じゃねえだろう! バケモノだらけなんだぞ!」

「関係ない」

 さらに銃を撃つビショップ。

「お前をずっと追ってた。ようやく追いついたぞ」

「馬鹿めが!」

 シモンは、並べられた樽の裏に身を隠すと銃の弾丸を確認した。

 相手は、追跡隊の人間らしいがどうも感じがおかしい。

「お前、誰だ?」

 挑発して相手が顔を出すのを待つ。

「誰でもない。お前を始末するように頼まれただけだ」

「ふん……賞金稼ぎか」

「アニキ!」

 その時、弟のトーマスがビショップに向けて銃を撃った。

 狙いは定まらず、ビショップは身を伏せただけで無傷だった。

 シモンもビショップに向けて撃ちながら弟のいる方に走った。

「逃げられると思うな!」

「うるせえ! 薄汚え、賞金稼ぎが!」

 シモンとトーマスは暗闇の中に紛れて姿を消した。

 後を追おうとしたビショップの肩を誰かが掴んだ。

「おっと!」

 反射的に銃を向けるビショップの目の前にいたのは、ライフルを持った保安官のオコナーだった。

「シモンか?」

「ああ、向こうに逃げて行った。俺は追うぞ」

 いつもは、口数が少ないビショップも興奮気味に言った。

「待て、ひとりじゃ危険だ。俺も行く」

「好きにしろ」

 二人は、オコナー兄弟を追って暗闇に入っていった。



 シモンとトーマスは、身を隠しながら、逃げていた。

 トーマスはよろめき倒れる。

「大丈夫か」

 シモンが駆け寄った。

「撃たれたか?」

「いや……撃たれちゃいねえが、身体がだるいんだ。身体も寒い。きっと、病気だ。くそっ……アニキ、俺を置いて行ってくれ」

 トーマスの顔色は、悪く、

「馬鹿言うな。お前を置いていけるか」

 そう言ってシモンは、トーマスを助け起こした。

「すまねえ、アニキ」

「気にすんな。見ろ。あそこに隠れよう」

 駅の線路にはいつの間にか列車が到着していた。貨物列車も連結されている。

 シモンは、トーマスを連れて貨物列車に乗り込んだ。





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